□三省堂編:コンサイス地名辞典日本編
B6版.1,287+43pp.1975年1月.¥2,500.
全国の地名20,200項目を、発音の五十音順に並べ、行政区画による位置、社会科的解説、地名の由来などが記されている。巻末には字画による索引がつけられている。谷岡武雄、山口恵一郎両氏の監修により、それぞれの専門家の協力の下に、9年を費して編集されたもので、従来このようなハンディで多項目な地名辞典は無かったので画期的な仕事と云えよう。分布を扱う研究者にとってその有用さは説明するまでもないだろう。
[植物研究雑誌50(9):288(1975)]
□日外アソシエーツ:現代日本地名よみかた大辞典1-6巻
9,811pp.+7巻(索引)403pp.1985.日外アソシエーツ.東京.¥98,000.
財団法人国土地理協会が作製している「JIS都道府県・市区町村コードによる全国町・字ファイル」によって地名31万件のよみを字画によって調べられるようにしたものである。その地名の所属する行政区画名も記されている。地名の正しいよみを知ることはたいへん困難で、同じ地域の同じ漢字綴でも異なるよみをもつ地名が少なくないし、常識ではわからない特殊なよみをもつ地名も多い。論文など地名を引用するとき困るし、誤ったよみをつけたために後日誤解の種になることもある。この辞典によってこういう問題が軽減されるだろう。索引では地名の先頭二字の漢字の「機械的なよみ」で本文における出現頁がわかるように工夫されている。分布や分頼を扱う機関には備えておいてほしい本である。
[植物研究雑誌61(5):156(1986)]
□小川 豊:知っておきたい災害と植物地名
114pp.1987.山海堂.東京.¥2,000.
植物名の語源論はいろいろ目にするが、地名についてもその語源や解釈ははるかに盛んに研究されている。著者は建設省の技師で、長年の現場の経験を地名研究に生かし、とくに地滑りと植物地名の関係に重点を置いている。植物名はアサからワラビまで49種類を挙げ、崩壊地形の呼び名が植物名に転訛した実例を示している。住いを選ぶ人は関心をもつだろうが、植物名の語源をやる人にも、裏返しの立場から参考になるだろう。
[植物研究雑誌62(9):280(1987)]
□IWRB日本委員会:日本湿地目録
263pp.1989.IWRB日本委員会.¥3,200.
IWRBは国際水禽湿地調査局で、本書の表題の前に「特に水鳥の生息地として国際的に重要な」とあるように、日本野鳥の会に日本委員会が置かれている。ラムサール条約によって水鳥の生息地としての湿地の保護活動が活発になり、その基本資料として本書が作られた。湿地位置図には北海道から沖縄まで、重要な湿地51と特に重要な湿地24が示されている。特に重要な湿地については、別に簡単な記述と鳥相、保護・開発の動向が記されており、巻末にそれらの空中写真がある。文献リストは湿地の鳥類に関するものである。
[植物研究雑誌65(10):319(1990)]
□武内 正:日本山名総覧
558pp.1999.白山書房.¥1,700.
2.5万図に記録された山を主体に18,032件の山名が、県別、地図別にまとめて示されている。項目は、山名、読み、標高、市町村名、三角点種別、地図名。このほかに登路の有無、100、200、300名山、干支に因む山名が検出できる。索引は山名のJISコード順である。名山探しや観察会の場所選びには便利だが、地名の位置さがしの目的には、とくに読みによって山を探し当てられないので、この本は折角だが使いにくい。著者は山名読みの正確を期するため、すべての関係市町村からほとんど100%回答を得るまで、質問を根気よく繰り返したということだ。だから山名の読みについては、地元の資料に基づいた「正確さ」を期待してよく、私の日本地名索引などはものの数ではない。本書では、印刷物という制約のため、すべてのデータを示すことはできないので、次にのべるフロッピー版の方が、われわれには利用価値が高いだろう。
[植物研究雑誌75(1):68(2000)]
□武内 正:FD日本山名総覧「全国版」
1999.白山書房.¥16,800.
こちらが本命である。1.4MBのFDに圧縮されたテキストデータとして供給される。解凍すると約3MBになるので、容量の大きい媒体にコピーしてから処理する必要がある。項目数は24項目、緯度経度(秒単位)、山の別名、複数の市町村にまたがるものはそのすべて、など、工夫をこらした丹念なデータ作りである。データはコンマ区切りのテキスト形式なので、解凍後は自分の目的に応じた項目を拾ってデータベースに読み込めばよい。そうすれば、読みからでも漢字からでも検索できる。JIS漢字表にない文字は作字せずに、「木偏に単」のように説明してある。作字してしまうと、移植のとき壊れる恐れがあるので、これは賛成である。中域版(北日本、関東中部、西日本版)、小域版(県別)も用意されている。
[植物研究雑誌75(1):68(2000)]
□国土地理院:数値地図25,000(地名・公共施設)全国CD-ROM版
2000.日本地図センター.¥7,500.
2万5千分の1図上の注記(文字列のこと。いわゆる地名にあたる)約467,000件および公共施設名約103,000件が収容されている。公共施設とは国や地方機関、警察、学校、病院、郵便局なので、地図上では記号で表示されているものがほとんどなので、これらが文字で検索できるようになった。レコードは漢字、読み、位置(秒の少数およびメッシュコード)、属性(たとえば自然地名では森、林、原、砂丘、湿原など)、所属行政区画、所属地図名など、非常に多くの項目から成り立っている。多くの項目には文字と共に階層コードが与えられているので、これを利用すれば文字面に関わらず同種の地名を抽出したり、分類、配列したりすることができる。データはそれぞれCSV、BDE、MDBの3種類の仕様で作られているので、利用者は自分に都合のよいものを選べばよい。国際的利用のためにローマ字項も用意されているが、いまのところ空白になっている。第一第二水準以外の文字は外字リストをインストールして表示できる。基礎資料とした地形図の管理情報は別ファイルとして付属しているので、分布記録に地図単位のメッシュを利用している人には、これも便利だろう。検索や表示のための簡易表示ソフトを内蔵しているので、データベースソフトを持たない人でも検索や抽出ができる。検索結果の印刷はもちろん、外部ファイルに取り出すことも可能である。これらの情報は1998年迄に刊行された地図から得られた最新のもので、データの更新は毎年行うとのことである。本CD-ROMはNational Gazetteerに当たるもので、わが国でも遂にこういうものができたことはまことに慶ばしい。とくに地名の読みがこれによって1つのよりどころを得たことは、分布情報のデータ化を行う者の悩みの1つが解消したことになる。値段にくらべて非常に利用価値の高い情報である。私の日本地名索引はこれで役目が終わったかというと、そうともいえない。なにせ「最新の」情報なので、標本ラベルに現れる古い地名や「誤った地名」は検出できないし、毎年更新されてしまう。とは言っても、毎年やれるとは思えないが…。少なくとも旧5万や20万図のデータについては、弱体ながら当分出番があるだろう。近い将来測地系の変更が予定されており、その際には経緯度地に変化があるが、換算方法については決定次第公表するとのことである。
[植物研究雑誌75(5):327-328(2000)]
元・国立科学博物館 金井弘夫 著
菊判 / 上製 / 904頁/ 定価15,715円(本体14,286+税)/ ISBN978-4-900358-62-1
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