※ 各施設の情報は刊行当時のものです。
B●アジア
〇インド
013 インド国立植物園(カルカッタ植物園)(Indian Botanic Garden, Howrah)
- カルカッタ/ハウラー
- 711103 India
カルカッタ市から車で約1時間、市の河向こう
日出~日没 入園自由
無料- 1787年イギリスが創設した純英国風景園。アッサムヒマラヤ茶のプランテーションを生み出したインド政府植物調査所の直轄植物園の1つとして知られる。資源植物、薬用植物、ヤシ、タケ、タコノキ類やブーゲンヴィレアの園芸品種、ラン、ミカン類のコレクションが優れている。特にヤシ類は有名で約100種が収集され、世界最大のコレクションになっている。コレクション数はおよそ5,000種。また、ここの標本館はアジア最大のもので、インドと東南アジア、特にヒマラヤ地区の植物を中心に、200万点あまりの標本がある。中でもJ.D.フッカーの大著、『インド植物誌』をささえた標本は有名である。園の面積は110ha、ここに約12,000本の植物が植えられている。園内では、インド各地の植物を地域ごとにまとめている。百余年の歳月を経ているので、自然のままに根付いている感じだ。世界でも最も大きな樹の1つといわれるバニアンツリーの古木は約600本の気根を着地させて林となっており、圧巻である。40℃を超す熱気と荒れ気味の広大な園内の一人歩きは考えもの。人物を撮ると小銭を要求され、出しても出さなくても騒ぎになりやすいので注意を要する。飲食物も用意した方がよいだろう。
(年間降雨量 1,536mm)014 サハランプール植物園(Saharampur Botanic Garden)
- サハランプール市
- デリー市北北東 150km
- 人口15万人の古い都市にある国立の植物園。1817年ごろに英国の支配下で創設された。インドの花卉園芸の発祥と発達の基地であり、数多くの蔬菜や果樹、観賞用植物の種子の生産や選択などが行われてきた。園内には広大な果樹園、バラ園、花壇などがあり、敷地内に国立園芸研究所がある。
015 ラルバーグ植物園(Lalbagh Botanical Gardens)
- マイソール州/バンガロール市
- 6:00~20:00
- 1856年イギリスの統治下にて創設された南インドのマイソール州にあるインドご自慢の植物園。年間を通じて快適な気候のもと、広い敷地内は12の大きな植栽区に分かれ、美しい樹林、池や流れ、生垣や花壇、ガラス室などが配置される。中でもホウオウボクやジャカランダ、アフリカンチューリップなどが大木になっている。その他には観賞用としてのラン類、有用作物としてのヤマイモやカシアなどに加え、多くのインド原産植物がコレクションされている。また、現在でも綿、ゴム、ブドウ、ナツメヤシ、ココヤシ、コーヒーなどマイソール州の農園芸の試験地として貢献している。1992年から毎年独立記念日に開催されるフラワーショーは有名で、多くの園芸関係、農業関係機関が参加している。
(海抜 300m、年間降雨量 910mm)
〇インドネシア
016 ボゴール植物園(Botanics Gardens of Indonesia)
- ジャワ島
- ジャカルタ市上り南60km
8:00~16:00- オランダが熱帯資源植物の基地として1817年に創設した国営の植物園。熱帯の有用植物の収集では世界一ともいわれ、ヤシ、ノタバコ、ゴム、キナ、コーヒー、紅茶などの重要な栽培の実験地となった。第二次世界大戦下では日本の占領下におかれ、当時日本で最高権威の植物学者中井猛之進博士が園長として奉職、数々の業績を残した。園内は86haと広く、206科1,466属 5,791類、合計24,630点もの熱帯の有用樹や大型の観賞用樹木をここで見ることができる。また、正門から入ってすぐにカナリウムの巨木の並木があり、周囲を圧倒する。キャノンボールツリーなどの幹生果や、ライチをはじめとした多くの熱帯果樹が、これも巨木になっていて驚かされる。サトイモ科植物、ラン、フタバガキ、バナナ、ヤマイモの仲間など、有用植物のコレクションに優れている。1848年に導入されたという現在東南アジアの重要な作物であるアブラヤシの母樹が、ここでは1世紀半もの間生きていたという記録もある。また、ゲストハウス近くにサトイモ科の植栽地があって、ここに世界の珍奇植物の筆頭とされるショクダイオオコンニャクが栽培されている。園内は広いので、食料や飲み物を持参するとよいだろう。有名な植物標本館や研究所も道を隔ててある。年間の入園者は100万人を超えるという。
(海抜 260m、年間降雨量 4,000mm)017 チボダス高山植物園(ボゴール植物園分園)(Mountain Garden Tjibodas)
- ジャワ島/チボダス
- ボゴールから車で約1時間
- 1862年に創設。ゲテ・バングランゴ国立公園を背景にした標高1,425mの高冷地にあり、高山植物を収集するボゴール植物園の分園。125haの広大な山地の敷地に、熱帯高冷地と温帯の植物が南北両半球から集められている。山の斜面にはスギやナンヨウスギ、ユーカリの林があり、それを背景に平地には大きな池がみられる。特にナンヨウスギのコレクションは有名で、各個体が驚くほど立派に育っている。その周りにはアロエやヒマラヤザクラが花をつけ、美しい。
018 エカカリア植物園(ボゴール植物園分園)(Ekakarya Botanic Gardens)
- バリ島
- デンパサールより北へ50km、車で約1時間半
入園料 約20円- 1959年開設でわりと新しいこの植物園は、広く静寂で美しくデザインされている。標高1,200~1,450mの高地にあり、園内は広く、駐車場もあるため入口まで車で入ることができる。約130haの敷地にジャワ島のボゴール植物園の分園として、主にインドネシアの東部山地原産の種や樹木類の中でも裸子植物が多く集められている。もとより植物資源の保存と潜在遺伝資源の保全を目的として、現在6,506種を保有する。ヤシ科のピナンガ属、ブナ科のリソカルプス、ムクロジ科のドドネア・ビスコサなど絶滅に瀕した種類の保存にも力を入れていて、広い芝生の中に貴重植物が点々と植えてある。日本のサザンカなどは驚くほど大きく育っている。ランなども多少あるが地味な感じだ。入口にはバリ風の彫刻をあしらった石造りの門がある。利用者は年間7万人と少なく、やや専門家向きであろうか。
〇シンガポール
019 シンガポール植物園(Singapore Botanic Gardens)
- オーチャードロードから数ブロック
- 入り口はHolland Rd.Cluny Rd.の交差点にある。
5:00~24:00(ラン園は8:30~18:00)、土・日 5:00~12:00
無料(ラン園2ドル)- 熱帯地方を代表する植物園の1つ。1859年の創立以来、イギリスの統治下で、熱帯アジアでの有用資源の生産試験基地として重要な役割を果たしてきた。熱帯植物のプロをめざす人たちの研究所、実習園として、ラベルもつけられており、とても充実した内容となっている。世界中からの標本のコレクションは600,000点を数える。繁華街のほど近くにあり、しかも52haの園内には原生林が残されている点も珍しい。観葉植物がのびのびと大きく育っている。特にヤシやタケ、花木、プルメリアの園芸品種のコレクションが有名。また、ラン園は必見で一般の旅 行者のバスツアー見学コースとなっており、700以上の原種、2,100以上の交配種を見ることができる。赤道真近の植物園ということもあり、1年中花が絶えない。年間100万人以上の来園者でにぎわう。手入れが行き届き、街にも近いので、植物ファンならずとも一度は訪れてみたいところ。日時計の庭やたくさんのトピアリーなども楽しめる。戦時下では、日本の園長であった、郡場博士とイギリスのコーナー博士を中心とした日英の植物学者のあたたかい交流が話題となったことでも有名。当時、昭南植物園と呼ばれて親しまれた。
(年間降雨量 2,540mm)020 シンガポール動物園(Singapore Zoo Garden)
- 園内は広く、植物もなかなか見ごたえがある。園内の植栽は専門の造園デザイナーが手掛け、いつも気を配っているので、手入れが行き届いていて園路はいつも花でいっぱいだ。ヘリコニアの植え込みなどがよい。ボーダーやフェンスなどに人気の花木を使っている。ジェードバイン、バウヒニア、ディレニアなどの珍花がごくふつうに見られる。
021 マンダイ蘭園(Mandai Orchid Garden)
- シンガポール市内より車で30分
9:00~17:30
無休
入園料 1ドル- マレーシア方面に向かう道から少し横に入った所にある。緩やかな傾斜を利用してつくられた園内には、バンダなどのランがいっぱいに植えられ、南国の陽光の下で見事に花開いている。誰でも退屈せず楽しめるところである。ランの直売もあるが、日本に持ち込むには決められた手続きが必要だ。このラン園のごく近くに動物公園がある。植物も豊富だからここも見逃せない。
〇スリランカ
022 ビクトリア公園(Victoria Park)
- ヌワラエリヤ
- ハクガラ植物園に近い高原の保養地ヌワラエリヤの街中にある。主にレクリエーション緑地として利用され、内部は意外に広く大樹が茂り、芝生や花壇もある。植物数が豊富で、ニッケイやダツラ、パピルスの生い茂る池などもあり、植物園といってもいいくらいだ。園内には小型の温室があり、イワタバコ科の植物が展示されている。四季おりおりの花壇はダイナミックで人気がある。芝生や花壇もよく手入れされていて気持ちがよい。
023 ハクガラ植物園(Hakgala Botanic Gardens)
- ハクガラ
- ヌワラエリヤから車
7:30~18:00- 東インド会社の要請で1861年創設した国営の植物園。紅茶の産地ヌワラエリヤにほど近い標高約1,700mの高冷地にあり、低地の熱帯植物中心のペラデニア植物園とは機能と役割を異にする。朝夕は冷え込む。傾斜地に針葉樹やタケなどが集められ、木性シダが園内各所に茂っている。バラ、クンシランなどもよく育つ。他にもユーカリ、クスノキの仲間やマツ、メラレウカ、モクマオウなどのコレクションなどがあり、その数およそ2,000種。このあたりに初めて導入された茶の原木が、今も園内に保存されている。また周辺の高冷地の樹木やいくつかの固有草類の保護に力を入れている。
(年間降雨量 2,000mm)024 ガンパハ植物園(Gampaha Botanic Gardens)
- ヘナルツゴダ
- コロンボから車
7:00~18:00- イギリス植民地時代の1876年創設で、国立の植物園。首都コロンボの郊外、水田の続く農村の間を走り、入口に着く。ヤシ並木の尽きた所に朽ちた大樹の幹が残っている。ゴムの木はこの園に最初に導入されたという。有用樹種を多く集めている。花木類などもあるが、概して地味で専門家向き。また、園内には天然林があり、ランや、薬用植物などがコレクションされている。また有用材、熱帯果樹、観賞用樹種などの収集にも力を入れている。園内には店がないため飲み物の用意が必要。
(年間降雨量 2,554mm)025 ペラデニア植物園(Royal Botanic Gardens, Peradeniya)
- ペラデニア
- コロンボ市より東北に166km
7:00~18:00- 1821年にイギリスが熱帯アジアにつくった資源植物園の拠点の1つ。歴史と規模を誇り、東南アジアにおける主要植物園の中で、保有植物数と種子の保存、学術的資料の蓄積などの質、量ともに最大の植物園となっている。園内の植物にはすべてにラベルが付けられているので、熱帯植物ファン必見の植物園である。古都キャンディにほど近く、海抜約500m。広い園内はよく整備され、手入れが行き届いている。正門の右側に植えられているヨウラクボクは有名。フタゴヤシの並木があり、巨大な果実を直に見ることができる。広い芝生の中に巨大なベンジャミンの木などがある。奥まった所にあるキャベツダイオウヤシの並木は有名だ。このようにタケ類、ヤシ類、裸子植物のほか、特に木本性の植物に卓越したコレクションを誇る。全体に明るく、低地ほど暑くない。花木、草花、ランなどのほか、香料植物、果樹など由来のしっかりした植物がたくさん植えられている。コレクション数はおよそ4,000種。園長のスミツラ・アラチチ氏は世界に名前が知られる熱帯植物研究家で、本書の執筆協力者でもある。
(年間降雨量 3,022mm)
〇タイ
026 ローズガーデン(Rose Garden)
- ナコンパトム
- バンコク市内から国道4号線を西に34km。車で30分
8:00~18:00
無休
入園料 220バーツ- バンコク郊外のナコンパトムにある。その名の通りバラ園があるが、暑さのためか、これは今ひとつ元気がない。花が見事なのは11月から1月の寒季の間だけである。私たちの興味はもちろん熱帯の花草の美しい植栽に向けられる。広大な園内は、樹木が生い茂り、ホウオウボクやブーゲンヴィレアなどが咲き、ラン展会場などにもされる。モクマオウの見事な生垣やフェンスに囲まれたホテル、園内の池や川に臨んでレストラン、タイの農村風の建物などが軒をつらねる。観光向き。
027 ウィークエンド・マーケット(Weekend Market)
- バンコク
- 土、日に開かれる市場で、以前はサンデーマーケットと呼ばれていた。食品、衣類、雑貨など何でもあるが、植木市場として東洋一を誇る。植物関係では、庭木、果樹、草花、ラン、水草、種子や園芸や造園用の用具や材料など何でもあり、サンタンカなどの新しい品種も数多くこのマーケットから売り出された。最近は珍しい品種などの取木繁殖した丈夫な苗を山積みして売っている。もちろん見るだけでも楽しい。このマーケットで注意を要するのは、数多くの山採りしたランなどが売られていること。このほとんどは、ワシントン条約によって国内持ち 込みは厳禁されているので気軽に購入しない方がよい。内部は迷路のように入り組んでおり、方向感覚のない人は迷子になる恐れもある。
028 ルンピニ公園(Lumpini Park)
- バンコク
- 市内ラーチャダムリ通り
- バンコク一の大きな公園で、日比谷公園の約2倍の広さ。市民の憩いの場となっている。池のほとりに散策の道があり、バウヒニア、イクソラ、カシアなどの花木が咲く。ヤシの木を集めたところもある。
〇ネパール
029 ゴダワリ植物園(Royal Botanical Garden Godawari)
- ゴダワリ
- カトマンズから車で約40分
夏10:00~17:00、冬10:00~16:00- カトマンズ郊外、プルチョキ山の麓にある82haを有するネパール最大の植物園。開園は1961年というから比較的新しい。国内自生の樹木、薬草、草花などを総合的に集めていて収集数は国際級で約2,300種。最近は特に薬用植物とランに力を入れている。また中央部ヒマラヤ特産のシャクナゲやマグノリアなどのコレクションは注目に価する。その他には観賞用植物、シダ植物、多肉植物などが多い。また、絶滅に瀕した植物の保存と増殖など保護研究も行っている。プルチョキ山は野草が多く、植物園の裏山に入れば野生のランやシャクナゲにもお目にかかれる。この園は、日本の大学の植物園との共同研究も比較的盛んで、日本とネパールの栽培家の交流拠点である。
(海抜 1,500~2,000m、年間降雨量 2,116mm)
〇パキスタン
030 カラチ動物公園(Zoological Gardens)
- カラチ市
- 7:00~19:00
- 市内中心部に位置する国営公園でごく低料金で入園できる。敷地は16haあって動物や植物を見せながら、園内では歌合戦などのイベントが開催されるので、日曜日などは屋台がたくさんでて終日にぎわう。園内の樹々は大きく、フェンスやアーチ風の植栽がよく目立つ。園の裏手に苗圃があって、ここではこの国の最大の有用樹、ニームツリーことインドセンダンを大量につくっており、緑化種苗の研究や生産も行っている。コレクション数はおよそ430種。
〇フィリピン
031 フィリピン国立植物園(Philippine National Botanic Garden)
- ケソン
- フィリピン大学内
8:00~17:00- 1968年にフィリピン大学が教育を目的として創設した植物園。敷地は144haと広大で主なコレクションとしてはラン、ヤシ、バナナ、サトイモ科植物、クワ科植物があり、中でも固有種の収集に力を入れている。来園者へのサービスとして図書館やビジターズセンターがあって、比較的よく相談にのってくれる。
(海抜 350m、年間降雨量 3,546mm)032 マニラ動植物園(Manila Zoological & Botanical Garden)
- マニラ市
- ハリソン公園
7:00~18:00- 1959年に創設した国営の施設で、5haの敷地に外来の有用樹を中心に約10,000種が収集展示されている。中でもゴールデンシャワーなどカシアの仲間や、フィリピン自生のラン類の収集は有名。
(年間降雨量 2,366mm)033 バタンガス果樹試験地
- ルソン島バタンガス州
- バタンガスマンダリンの生産地の中にある。各種熱帯果樹が試作されており、見学に便利である。
〇マレーシア
034 レイクガーデン(Lake Gardens)
- クアラルンプール
- クアラルンプールの西方に位置する、マレーシアを代表する大公園で、園内は広々と明るく、奥まった所に2つの大きな池がある。多少起伏のある芝生の中に、プルメリアやムッサエンダなどの花木や草花が色とりどりの花をつけ、大樹が影を落としている。戦争記念碑があり、観光バスのコースに入っている。この公園は高速道路を挟んでおり、歩いて渡らなければならないので注意が必要。
035 ペナン植物園(Penang Botanic Gardens〔Waterfall Gardens〕)
- ペナン島
- ジョージタウンから車かバス
- ペナン島の北東、ペナンヒルから流れ落ちる滝の周辺につくられたのでウォーターフォール・ガーデンとも呼ばれる。イギリスがアジアにつくった資源植物基地の重要な拠点の1つで、1884年に開園。約30haの園内にはフタバガキ科を中心とした熱帯雨林の天然林の1部が残されている。特に興味深い植物は巨大なバンブーの株やバニヤンツリー、アガーチス、オオバナサルスベリ、板根をもつステルクリア・マクロフィラ、バオバブノキなど。その他に、保護植物としてラン類、シダ類、ショウガの仲間などがある。また、園内には野生のサルの群れが気 ままに飛び回っているので、植物をサルの被害から守るさまざまな工夫がされている。国内植物にラベルがないのが残念。ペナンヒル山頂にも庭園がある。
(海抜 350m、年間降雨量 2,731mm)036 オープンバザール
- 東マレーシア(北ボルネオ)
- コタキナバルやコタベルトなどではたくさんのマーケットが開かれるが、このバザールは規模も大きく季節ごとに野生品で変わったものが出てくるので、特におもしろい。食用や薬用に使う根茎植物や経済栽培されていない果実、山採りの花などがよく見られる。
037 プリンス・フィリップ公園(Prince Phillip Park)
- 東マレーシア(北ボルネオ)/コタキナバル
- 北ボルネオ、コタキナバルの街外れにある。入口に至る道路際にホウオウボクの植え込みが続いている。園内はさほど広くはないが、ハイビスカス、サンタンカなどの花木がたくさん咲いていて楽しい。市街地を外れた静かな所にあり、境界の大きなモクマオウの向こうは海岸になっている。
〇ミャンマー
038 メイミョー植物園(Maymyo Botanic Gardens)
- メイミョー マンダレーから67km
- メイミョーは古都マンダレー郊外にあり、標高約1,070m。植物園は街外れの湖のほとりにあり、高原のさわやかな空気の中で、デイコの仲間や、グレビレア、ブーゲンヴィレアなどが咲く。炭鉱時代の保養地で、高原野菜の産地でもある。ここで採れるイチゴは小さいがなかなか美味。
039 ヤンゴン(ラングーン) 植物園(The Agri-Horticultural Society of Myanma)
- ヤンゴン
- 7:00~11:00、14:00~17:30
- プライベートな植物園。園内は整備されている途中の様子。キャノンボール・ツリーの若木のまるい大きな実が印象的であった。街中にあって便利。これからの園内の充実に期待できる。
(海抜23m、年間降雨量 2,617mm)
〇台湾
040 鳳山熱帯園芸試験場
- 高雄市
- 林務局直轄の試験場で、台湾における園芸作物の推進を行っている中心基地。主に熱帯果樹と熱帯野菜の系統保存と品種改良、育種を行っている。研究機関で公開園ではないが、申し出れば気軽に入れ、案内にも応じてくれる。研究スタッフは37名。パイナップル、マンゴー、パ パイアの3大熱帯果樹の他にグアバ、レンブなどに力を入れている。
041 台湾省林業試験場恒春分所(墾丁熱帯植物園) (Hengchun Tropical Botanical Garden)
- 墾丁
- 高雄市から車で約1時間
- 台湾の最南端、鵝鑾鼻にほど近い観光地の中心をなしており、年間200万人が訪れる。またの名を恒春熱帯植物園という。台湾ではいちばん整備された植物園で、来園者へのサービスが行き届いている。設立は1906年、総面積800ha。入口からしばらくは花壇があったりするが、奥の方には200haの広大な原生林が残されている。ここは、熱帯植物ファンには格好な天然林散策コースになっていて必見である。約1時間ほども歩くと、石灰岩の奇岩台地に形成された、熱帯海岸林の植生を十分に堪能できる。いっぽう、園内の展示園には東南アジア方面の熱帯植物をよく集めていて、アカギやスオウノキ、ケガキ、タイトウウルシ、キナノキ、ニクズクなどの有用資源樹の大木が珍しい。全体的には造園緑地や園芸的にも考慮され、研究見本も兼ねて、ていねいに植えられているので勉強になる。植栽は繊維植物、薬用植物、染料、油脂植物、香料植物、ヤシ植物など有用性ごとに区分され、稀有植物区などもある。ほとんどのものにラベルが付いていてありがたい。園内の観海楼の展望台から見下ろす熱帯林の眺めはすばらしい。近くには国営の立派なホテルもある。
(海抜 320m、年間降雨量 2,291mm)042 園芸団地「公路花園」(植木センター)
- 台中市
- 年中無休
- 台中市郊外に広がる台湾最大規模の植木街。400軒を超える店がそれぞれ趣向をこらしていて、そのコレクションを見てまわるだけでも楽しい。全部を見ようとすると1日がかりになるから、3~4のナーセリーを選んで、じっくりとまわるのがよい。たいがい入口付近にそのナーセリーのスペシャリティというべきコレクションの一部が飾られているから、それが目安となる。トピアリーやよく刈りこんだ装飾木などを展示する店もある。
043 建國南路暇日花市(フラワーマーケット)
- 台北市
- 休日のみ開催
無料- 台北市の建国南路高速道路の下にあり、休日毎に開かれる植木市。ハッカクレンなどの小苗が、さりげなく売られたりしていて結構楽しい。花木、果樹苗、草花観葉植物、ランなどの他、種子、肥料、農薬、植物関係図書などを売る店もある。東洋ランを売る店も多いが、日本に持ち込むにはワシントン条約の関係上難しい。日用品、食品の市もある。
044 台北植物園(台湾林業試験場附属植物園)(Taipei Botanical Garden)
- 台北市
- 1895年創設。墾丁植物園と同じ林務局直轄の実験植物園で台北市内に位置し、研究的色彩が強い。日本が運営していた時代もあって、台湾産植物をはじめ、熱帯~亜熱帯の有用植物約1,500種ほどが集められており、育種や選抜などが盛んに行われ、現在も続いている。約100年におよぶこうしたコレクションを中心に、園内に保存されている樹々はどれも大きく立派である。大きく育ったアローカリア・クニングハミアの精英樹から選抜したという矮性種などが見られる。有用樹木類のほかヤシ、タケなどの類も多い。鉄柵に囲まれているので、見学にはやや不便な点もある。隣の試験場内には、28名のスタッフのもと研究施設が充実していて、台湾産植物標本なども多数ある。
(年間降雨量 1,957mm)
〇中国
045 西双版納熱帯植物研究所(シーサンバンナ植物園)(Xishuangbanna Tropical Botanic Garden)
- 雲南省
- 8:30~16:30
(休)日曜日- 1959年の創設。主に地域農業発展に寄与すべく集められた植物が多いが、最近はこの地域の固有植物や絶滅に瀕している稀少植物などの収集保存にも力を入れている。園内に残る原生林やミラクルフルーツの大木は圧巻。その他にも、ヤシ、ラン、タケ、熱帯果樹、ゴムノキなどの有用樹、観賞用植物、油脂植物、薬用植物など約80haの敷地内におよそ3,000種のコレクションをもつ。
(海抜 570m、年間降雨量 1,900mm)046 昆明植物園(Kunming Botanical Garden)
- 雲南省昆明市
- 昆明市から郊外へ11km
8:00~17:00- 昆明は亜熱帯圏だが高地なので、常春の気候となっている。植物園は中国科学院植物研究所の施設で、1938年の創設。43.8haの敷地でスタッフ数は76名。中国産植物の宝庫、雲南に自生する数多くの固有・特産植物が総合的に集められている。マンリョウ、ムラサキシキブの類な どもかなりの種類が見られる。その他にも、遺伝資源として価値を認められているグループや、観賞価値の高いツバキ、シャクナゲの変品種など約4,000種がコレクションされている。この地方に適するオリーブの研究や外国産観賞植物の栽培にも力を入れている。研究の場であるため、見学には節度を守り、身勝手な振舞いは慎むこと。書物も多数出版されている。
(海抜 1,980m、年間降雨量 1,879mm)047 華南植物園(広州植物園) (South China Botanical Garden)
- 広州市
- 9:00~16:00
- 1959年に開園。研究スタッフは176名。約300haに及ぶ広い園内は、それぞれ特徴のある10の庭園に分かれており、主に熱帯~亜熱帯の植物が植えられている。中でもヤシはおよそ80種あり、この植物園を象徴する存在になっている。大きな池には北アメリカ産のヌマスギや中国産のスイショウなどが植えられているのが珍しい。主なコレクションは、シダ、ソテツ、ラン、タケ、ヤシ、ショウガ、モクレンなどの仲間で中国南部のフロラなどおよそ4,500種におよぶ。そして、これらのコレクションはそれぞれの植栽区の中で見られるようになっている。特にタケやヤシなどは年数も経ていて大きく立派に育っている。池には中国風の橋や東屋もあり、地元の若い人達も大勢見学に訪れる。ぜひともいちばん奥にある針葉樹園まで足をのばしたい。
(年間降雨量 1,750mm)048 海南熱帯経済植物園(Hainan Botanical Garden of Tropical Economic Plant)
- 海南島
- 8:00~16:00
- 1958年創設、スタッフ55名。32haの敷地に、世界各国より、幅広く熱帯の植物が集められている。特別のコレクションとしてバティカ(Vatica astrotricha)やホペア(Hopea)、ゴバンノアシ、また、南半球に多いマキ科のダクリデュウム(Dacrydium)などがある。また、ライチ、アボカド、マンゴスチンなどの熱帯果樹園や、クローブ、チョウジなどの熱帯香辛料園、その他、熱帯薬用植物や熱帯花木などを集めた区画もあり、とても身近に多彩な有用植物が楽しめる。
(海抜148m、年間降雨量 1,766mm)<049は欠番>
050 広州蘭園
- 広州市
- 広州駅から徒歩10分、越秀公園の向かい
8:00~22:00
入園料 5~6元- 広州市の中心部にあり、駅にも近い。約200種類1万鉢以上の蘭が栽培されている。中国風の入口をくぐると、通路の西側は丈の高いシュロチクの植え込みになっている。3.6kmの園内には、ランのみでなく熱帯樹が生い茂っており、竹やぶ、スイレンの池もある。あちこちに大形の東洋ランが大鉢に植えてあるが、栽培はやや大まかな印象だ。
051 上海植物園(Shanghai Botanic Garden)
- 上海市
- 上海市郊外12km
8:00~17:00
無休- 1974年創設で、中国の植物研究の最も重要な拠点の1つ、約80haの園内には約500名のスタッフが働いている。園内には、有用資源としての植物保護を来園者に訴えるポスターなども貼られていてにぎにぎしい。奥まったところに隔離栽培苗圃があり、紹介者のみに特別公開してくれる。ここには国としての1級~3級保護植物の個体保存、また野菜、果樹などの有望な植物群の系統保存もされている。その他には、盆栽、マグノリア、アザレア、ツバキ、中国産のランなどのコレクションに優れており、約5,000種が集められている。盆栽と薬用植物の特別区画もある。
(年間降雨量 1,143mm)052 四川省成都植物園(Chengdu Botanical Garden)
- 成都市
- 成都市郊外北へ40km
8:30~17:00- 1986年創設のわりに新しい植物園。53haの敷地でスタッフ数113名。植物の宝庫、川西地区(四川省を中心とした長江上流をこう呼ぶ)の特産植物、有用資源植物の収穫と栽培研究を目的として誕生した。モクレン科植物区、カイドウ、ヤシ、ツバキ、モクセイの仲間などをコレクションした特別区などがあるが、園内整備はまだまだ途上で、これから10年、20年かけて充実していくという。主に有用樹木を中心に現在2,300種を集めているが、4,000種保有を目標とし、約1万種といわれる四川省の自生植物の約半数のコレクションを目指している。植物園は、パンダ、金糸猴が呼び物の成都動物園の手前にあるから、帰途に立ち寄るとよい。あらかじめ見学を申し出ておくと、ていねいに案内してくれる。
(海抜約 550m、年間降雨量 976mm)053 廈門園林植物(Xiamen Botanical Garden of Ornamental Plants)
- 廈門
- 7:00~17:00
- 1960年創設。中国では珍しく、造園や観賞用植物の試験地として108名のスタッフのもとにオープンした。主に熱帯~亜熱帯の観用植物を集めている。277haの敷地にその数およそ5,000種。ヤシ、ナンヨウスギ、サボテン、シンビジウム、カトレア、ベゴニア、ゴクラクチョウカやサトイモ科、ユリ科のコレクションに優れている。また、マツ、タケ、ヤシ、ソテツ、ラン、薬用植物、ユーカリ、盆栽、多肉植物だけをそれぞれ集めたコーナーもある。豊富な植物に囲まれて園内の景観も美しく、いつも観光客でにぎわっている。
(海抜50~250m、年間降雨 量 1,055mm)054 廣西薬用植物園(Guangxi Botanical Garden of Medicinal Plants)
- 廣西
- 8:00~17:00
- 1959年創設で廣西自治区が管理する植物園。スタッフ数269名を誇る世界最大級の薬用植物研究所でもある。ここではその名にあるとおり、漢方に用いる原植物が集められている。中国の伝統的な薬用植物をはじめ、実験動物、薬になる動物を集めた区画もある。また、省の特産種のほか、特別にショウガ科植物のコレクションがあって、約130種が収集されている。全体で 240haある敷地内に、およそ2,000種の動植物が集められている。
(年間降雨量 1,300mm)055 香港動植物公園(Hong kong Zoolozical and Botanic Gardens)
- 香港島
- 中環(Central)からバス 総督府の宮邸向かい
6:00~19:30(植物園は22:00まで)
無休
無料- 敷地は5haでさほど広くはないが、ボンバックスやバウヒニア、ロドレイアなど、この地方独特の珍しい花木類がまとまって見られる。熱帯~亜熱帯性のモクレンやツツジ、ランなども見られる。狭い園内を生かして、つる性の植物の植栽やボーダーの植栽など、デザイン的に優れている。また、この園の樹々はどれも大きくなっていて、この樹冠と急な斜面を利用して野鳥生態展示園が併設されている。派手な色彩をした数多くの熱帯の鳥が観察できる。園内では木陰のベンチで休息する地元の老人達や、太極拳をする人の姿も見られる。また、道路の下のトンネルをくぐると動物園があり、動物と植物の展示とがうまく混じり合っている。
(海抜 110m、年間降雨量 2,176mm)
坂嵜信之 編著
尾崎 章・香月茂樹・清水秀男・橋本梧郎・花城良廣・毛藤圀彦 共著
B5判 / 上製 / 1,224頁 / 定価64,900円(本体59,000+税)/ ISBN4-900358-44-4
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