ハイビスカス 真夏の東京はハワイより暑い
温帯の戸外で熱帯植物を栽培するとどうなるか、ハイビスカスを例にとってみましょう。この木は熱帯・亜熱帯では年じゅう生育し花が咲きますが、東京ではどうなるでしょうか?
表「熱帯の国々と日本の代表都市の気温差」をみると、ハワイの平地で月平均気温の差は22.7~27.5℃と年較差はわずか4.8℃に過ぎません。ところが、東京での年較差は5.2~27.1℃で20℃以上もあります。
真夏の東京はホノルルよりも僅かに平均気温が高いくらいなので、ハイビスカスはよく生育し、初夏から秋にかけて次々と花を咲かせます。ところが、11月から翌年の4月までは15℃を割ってしまいます。ハイビスカスの葉は霜が降りると、黒変して枯れますが、茎のかたい部分はまだ生きていて、新しい芽を出す力があります。しかし、何度も霜に当たると、茎の部分も死んでしまいます。運よく地際の部分が生きている場合には、次の年の初夏に芽が吹き出すかもしれません。ですがその場合、樹の持つ力は弱く、次の冬はもう生き延びられないでしょう。
シンガポールと日本の代表都市との暖かさと降水量の違い
上の表は月別平年気温と月別平年降水量をほぼ熱帯直下のシンガポールと北回帰線より北に位置する那覇・鹿児島・東京を比較したものである。
シンガポール:熱帯に属し、一年のうちの気温の変化は少ない。雨量は11、12月には特に多いものの、年中雨に恵まれている。特に潅水の必要はなく、自然のままでガーデンシティが出来上がっていく。
那覇(11b):1、2月に18℃を割るが、その他の月はマイルドで、年間を通して雨に恵まれている。那覇は雨量については少なくないが、冬に気温が下がるので植物の生育はおさえられ、耐寒性の弱い種類はダメージをうける。
鹿児島(9b):18℃を割る月が6ヶ月あり、暖帯に属する。冬(11、12、1月)にはやや雨が少ないものの、全般的には雨に恵まれている。
東京(9a):18℃を割る月は8ヶ月ある。また1月と12月は雨が少なく、低温かつ乾燥する時期といえる。低温と乾燥によって、植物は大きなダメージをうける。東京は冬に気温が下がると同時に乾燥し、一般の植物は休眠する。休眠しない植物は乾燥(空っ風)にさらされ、傷むことが多い。
坂嵜信之 編著
尾崎 章・香月茂樹・清水秀男・橋本梧郎・花城良廣・毛藤圀彦 共著
B5判 / 上製 / 1,224頁 / 定価64,900円(本体59,000+税)/ ISBN4-900358-44-4
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