開花習性とその調節
〇「日長」による開花のちがい
新しくできる芽が「花芽になるのか、葉芽になるのか。」が判るでしょうか。
花芽の形成には日の長さ(日長)が関係することがわかっています。熱帯でも、一年のうちわずかながら太陽の高さは変わり、日の長さも変わります。熱帯には、日が短い状態で花をつける、いわゆる短日植物が比較的多いのです。
短日植物は日が短くなってから、やっと花芽をつけます。ですから、亜熱帯や温帯で栽培すると、夏の陽射しが長い間は栄養生長のみを続け、大きくはなるが花はつけない。そして、やっと花をつける頃には寒さが来てしまうという不幸なことになります。このような場合には人工的に日の長さを調節したり、ガラス室に入れたりして温度を調節し、希望の時期に花を咲かせます。いっぽう、日の長さに関係なく花をつける種類は、適当な生育環境ではほぼ一年中花をつける場合もあります。
〇花をつけない・咲かないのはなぜ
植物体はどんどん大きくなっていくのに、花をつけない場合がありますが、どうしてでしょう。生理的には、新しくできる芽が花にはならずに葉になってしまう状態のことをいいます。これは、先に述べた日長条件のほか、植物体の栄養状態によるのです。
肥料がよく効き、水分が充分であれば、植物は良好な栄養生長を続けます。そのような場合、花つきをよくするには、潅水を控えて乾燥気味にする、枝を矯めて水平に、または枝先を下げる、根の一部を切り縮める、環状剥皮をするなど、人為的、強制的に生長や開花などの植物生理作用を調節する栽培テクニックがあります。
反対に、生育環境が厳しすぎて栄養不良の場合は、花芽ができても、途中で発育をやめてしまうので、開花には至りません。勿論、その場合は肥料や水分の補給が必要です。
〇返り咲き
季節外れの花(返り咲き)はよく知られている現象です。
生長している樹を強く剪定したり、葉を全部取り除いたりすると、強制的な休眠を与えたことになり、植物は新しい生長を始めます。また、台風期に強い潮風を受けて落葉し、あるいは夏のひどい乾燥や虫害によって葉がなくなる場合も、植物は一時的な休眠状態になることを強いられるので、その後の新しい成長の際に返り咲きがおきるのです。
坂嵜信之 編著
尾崎 章・香月茂樹・清水秀男・橋本梧郎・花城良廣・毛藤圀彦 共著
B5判 / 上製 / 1,224頁 / 定価64,900円(本体59,000+税)/ ISBN4-900358-44-4
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