繁殖について
〇種子から育てる
繁殖には、有性生殖(種子繁殖)と無性生殖(栄養繁殖)とがあります。
種子から育てる繁殖法を実生(みしょう)といいますが、種子は一般に細かいほど生命力が短いとされます。そのような種子は、熟したものをすぐに播くとよく発芽します。その反対に、硬実性といって生命力が長く皮がかたい種類は、種皮に傷をつけたり、熱湯処理(例えば、茶碗に種子を入れ、熱湯をそそいで自然にさまし、一昼夜くらいおく)、薬品処理(例えば、濃硫酸に数分浸し、水洗後、重曹水で中和し、さらによく水洗いしてから播く)などにより発芽を促します。
熱帯植物の発芽には40℃、またはそれ以上の高温が必要な場合が少なくありません。
また、発芽は揃わないのが普通で、半年後、1年後になってボツボツと生えてくることも珍しくありません。
どんなトラブルが起こるか予測できない自然界では、一斉に生えるのは子孫を残すのにむしろ不利なことなのです。また、種子から育てた植物は、多様性をもっているので、育ち方や花の色などが必ずしも親とは同じにはならないものです。
〇挿木で繁殖した壷植物は膨れない
栄養繁殖法には、挿木、取木、株分けなどの方法があります。
枝を切って土に挿し根を出させるのが「挿木」、枝の途中に傷をつけて水苔などで包み、湿気を保って根を出させるのが「取木」、また、地下部の根の出た部分を切り放すのが「株分け」です。花を早く見たい場合には、既に花をつけている枝の部分を接木したり、挿木する方法でその目的が達せます。もちろん、同じ性質の植物体(園芸品種)をふやすには、栄養繁殖によらねばなりません。
ところが、壷植物の枝を挿木した場合、基部が膨れるような性質は失われてしまう現象がみられます。本来の姿を得ようとするなら、種子を播いて育てる(実生)ことが必要です。
どの植物がどの方法でうまくふやせるかは、専門家のノウハウとなります。現在は植物を効率的に栄養繁殖させるバイオテクノロジーと呼ばれる方法が開発され、脚光を浴びています。
坂嵜信之 編著
尾崎 章・香月茂樹・清水秀男・橋本梧郎・花城良廣・毛藤圀彦 共著
B5判 / 上製 / 1,224頁 / 定価64,900円(本体59,000+税)/ ISBN4-900358-44-4
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