地下部の環境
〇赤い土、ラテライト
根が伸びる地下は、土や礫で成り立っています。
地中の深いところは、火成岩あるいは水成岩の硬い岩石です。それらの硬い岩石も長年の太陽熱、雨などの物理的・化学的な力が加わって砕かれ、土壌となります。土壌は、母岩の種類、含んでいる礫、砂、粘土などの構成、含まれる有機質はさまざまです。母岩が石灰岩の場合には、アルカリ性の土壌となります。
熱帯では、ラテライトといわれる保水性が悪く痩せた赤色土壌もよくみられます。特に熱帯低地では、高温多湿のために有機質が分解しやすく、有機質が乏しいのが一般的です。
植物には、生育に適した土壌環境が必要です。また、土壌の酸度も影響します。代表的な例としてツツジの類は酸性を好み、沙漠の乾燥地の植物はアルカリ(塩基)性土壌によく耐えます。
〇よい土地の条件
土地の条件としては、
- ①土壌が肥沃でやわらかい
- ②空気の流通と排水がよい
- ③水分を多く含んでいる中性に近い土壌
この3つの要件がそろえば、たいていの植物は生育可能です。その反対に、排水の悪いところでは、根腐れを起こしやすく、過乾燥は生育を阻害します。
起伏のあるところでは、丘の上の平地がよいか、斜面がよいか、あるいは谷筋に植えるのがよいかは、土壌の構成と水分の供給を考慮して決めます。傾斜地では、表土が流れない工夫としてグラウンドカバー(地被)植栽も有効です。
このように、土壌が緻密で粘性が強い、また、地下水位が高く、根の呼吸が妨げられるような土地では、客土や排水設備、土壌改良を行う必要があります。人工地盤に使用する土壌は軽いことが要求され、パーライトやバーミキュライトなどの人工土が多く使われます。
一般的に、植物をうまく育てるコツは、堆肥などの有機質をすきこんで土壌改良を行い、給水施設や排水溝を設けて人工的に水分の調節をし、また、適期に肥料分の補給を行うなどのコントロールをすることです。
〇どうしたら地温を保てるか
次に、地温と生育の関係に触れてみましょう。この関係は見逃してしまいがちなものです。
植物によっては気温よりも地温のほうが生育、開花結実などに関係の深い場合があります。日本の冬には、地温はどんどん低下して植物にダメージを与えます。そこで、日当りのよい南斜面や、陽溜りに植えたり、畦を高くするとか、鉢に植えて鉢内の土の温度を上げるなどの方法をとります。こうした栽培管理を行うだけでも、相当の防寒効果があげられるのです。
南面の傾斜地、建物周辺などの風の当たらない場所を選ぶほか、ビニールを株元に敷いたりすると、より地温が高まります。また、南に面した石垣の上などは、太陽熱をよく吸収し、保持してくれる適地です。
〇防寒対策として
防寒対策のもう一つの方法としては幹、枝が直接寒さに当らぬように保護することです。
植物をビニールや防寒ネットで覆うのは効果的です。常緑植物では、昼夜の温度較差があまりに大きいと、樹勢が衰弱してしまうので、冬期は寒暖の差をできるだけ少なくした方が安全です。時おり、南面の日当りのよい所のものが枯れ、日陰のものが生き残る例を見ますが、これは昼夜の温度差が原因です。
常緑樹は、冬期は水分を地上へ送る量が少なくなります。そこに乾燥した寒風が吹きつけると、葉の水分が奪われて寒害をおこすのです。対策としては、ソテツのワラ囲いなどのように、むしろや藁で木や枝を囲う方法が有効です。冬季には植物は同化作用がにぶるので、日の当たる必要があまりなく、暗くても差支えありません。むしろ、寒暖の差を少なくするよう工夫を凝らしたいものです。
坂嵜信之 編著
尾崎 章・香月茂樹・清水秀男・橋本梧郎・花城良廣・毛藤圀彦 共著
B5判 / 上製 / 1,224頁 / 定価64,900円(本体59,000+税)/ ISBN4-900358-44-4
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