Ⅲ 熱帯花木を選ぶ
日本列島には今日までにさまざまな種類の熱帯花木が導入されました。そのうちいくつかの種類はうまく定着したものの、それは少数で、多くの種類は育たずに枯れてしまったようです。しかし、そのような植物の定着の可能性はほんとうに望めないのでしょうか? 過去にうまく育たなかったという結果だけを鵜呑みにしてしまっていいでしょうか。
これは導入した側の植物の生育に適した環境に対する理解が浅く、取扱いが不適切だったことに原因があります。またこうした場合、失敗に関するデータは隠されてしまっているケースが多いものです。失敗は成功の元といいます。植物本来の持つ性質、特に耐寒性を調べ直して前向きに再度チャレンジしてみることも重要なことだと思います。
元来、植物は栄養繁殖をした(遺伝的に同じ、いわゆるクローン植物)園芸品種などをのぞき、有性繁殖(種子繁殖)したものは、形質にわずかずつでも違いがあるのが普通です。耐寒性についても、個体による変異を期待できます。したがって、1個体で失敗したからといって諦めず、複数の個体で試してみる必要があります。
この章では、「熱帯花木」の植栽を成功させるヒントを探ってみましょう。そのために、琉球列島から北上して薩南、さらに九州・四国・本州の中南部の暖地までの事例をあげ、広範囲な植物も含めて考えてみることにします。
坂嵜信之 編著
尾崎 章・香月茂樹・清水秀男・橋本梧郎・花城良廣・毛藤圀彦 共著
B5判 / 上製 / 1,224頁 / 定価64,900円(本体59,000+税)/ ISBN4-900358-44-4
〔花の美術館〕カテゴリリンク