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フヨウ 低木から多年草に変化
こんどは、中国産のフヨウでみてみましょう。フヨウはハイビスカスと同じ属の植物ですが、より低温に耐えます。亜熱帯では、3m以上の多幹性の低木状に育ち、葉はほとんど常緑です。暖帯でも、強い霜が当たらなければ2m位の低木になります。冬には完全に落葉しますが、霜の強い寒さのきびしいところでは、根元から30~50cmの太い茎の部分を残して枯れ、毎年新しく伸びて、冬にはまたそこまで枯れ込みます。さらに気温の低くなる関東地方以北では、毎年地上部が枯れ込み、春になると地際から新しい枝が伸び、あたかも多年草のような生長を繰り返すことになります。もちろん、ひどく寒い冬には地下部まで枯れてしまいます。
熱帯産でもサルビアやマリーゴールドのような、高温期に一生を終える一年草に限っては、温帯でもうまく育ちます。春に種子を播けば夏から秋にかけて生育を続け、開花・結実させることが可能です。(注:日長そのほかの理由から、栄養生長を続けるばかりで花や実をつけない場合もあります)「熱帯花木」は冬の寒い戸外で栽培することは困難ですが、このような一年草のように扱うことができれば育てられるのです。
また、多年生の植物の場合、地上部は冬には枯れてしまうことになりますが、バショウ科やショウガ科のように、地下部にある太った根・茎やいもなどを保護する手段として、敷わらの上にビニールをかけるなど保温してやるか、あるいは掘り上げて暖かい所で保護すれば、温帯でも翌年の春から秋にかけて野外で栽培することができます。
坂嵜信之 編著
尾崎 章・香月茂樹・清水秀男・橋本梧郎・花城良廣・毛藤圀彦 共著
B5判 / 上製 / 1,224頁 / 定価64,900円(本体59,000+税)/ ISBN4-900358-44-4
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