植物の年齢による違い
〇接木・挿木苗はすぐに咲く?
「花が咲くか咲かないか」ということは、花木にとって決定的に重要な問題です。
いろいろな原因がありますが、その1つには、植物の年齢があります。花木でも新しく種子が発芽してその年に花が咲く種類がある反面、年を重ねてある年齢に達しないと花をつけない種類もあります。俗にいう「桃栗三年柿八年」と同じです。ですから、花をつけるようになった枝を、接木や挿木などでふやせば、その個体はもうその年からでも花をつける可能性をもつことになります。
幼いときの植物は、抵抗力が弱いのが普通です。特に、強い日射しが当たり乾燥した空気が吹きつけるところは、たいへん厳しい状況になります。ですが、大きな植物体は、強い日射しや乾燥にも耐えることができます。
日本の暖帯では「熱帯花木」を植える時期は、田植えのすんだ頃から梅雨頃が適期です。そうすれば、初夏から秋にかけてはよく生長します。そして、できるだけ早く根付かせることです。来るべき冬までに少しでもしっかりと丈夫に育たせ、耐寒性を強くしておくことが必要になります。
もし、寒さで地上部が枯れても、地際部や地下部が生きていれば、次の春には、地際部から新芽が伸び始めます。毎年このようなことを繰り返すと、樹木になるはずのものが多年生状になったり、あるいはじり貧となって、枯れてしまいますが、これは仕方のないことです。ここまで楽しめれば充分と諦めてください。
〇大きな株は寒さに強い
いっぽう、幹が太く大きい植物体では少し話が違います。
春から夏にかけて力強く太い枝を伸ばし、丈夫な樹皮が覆うので、冬の寒さにさらされても幼植物ほど傷めつけられることはありません。植えどきは晩春から梅雨にかけてで、厳しい冬になるまでの夏の間、充分に根を張らせておくことが必要です。
例えば、アメリカデイコの大きな幹の株を東京の海岸付近で植えた場合、新しい枝が毎年出て美しい花を咲かせますが、毎冬その年に伸びた枝のほとんどつけ根まで枯込み大きく生育することは期待できません。しかし、よほどの寒さがこない限り枯れることもありません。
このように、熱帯花木を植栽する場合には「大きくならなくてもよい」と割り切るのもまた一つの考え方でしょう。そして、ある程度大きくなって幹がかたまった株を選ぶとよいでしょう。また、冬には太い幹を防寒保護し、凍らないように守るのが有効です。幹の内部にある水分の凍結は決定的なダメージを与えるからです。
坂嵜信之 編著
尾崎 章・香月茂樹・清水秀男・橋本梧郎・花城良廣・毛藤圀彦 共著
B5判 / 上製 / 1,224頁 / 定価64,900円(本体59,000+税)/ ISBN4-900358-44-4
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