ローカルな熱帯花木
〇アンサナやギョボクの樹を知っていますか
以上のように、熱帯に広くみられるいわゆる“コスモポリタン的な花木”の他に、ある都市、ある地域のみに集中的に見られる“ローカルな花木”も注目に価します。
海岸の都市シンガポールは「ガーデン・シティ」と呼ばれ、緑の多い都市として有名です。ここでは乾燥が必要な多肉植物を除いた、熱帯の花木のほとんどの種類が見られます。ここのメインストリートを覆う大きな樹は、現地名をアンサナといい、ローカルな花木の代表といえます。この樹はインドシタンという和名もつけられて、ちょっと綺麗な黄色の花序をつけるので、この本でも取り上げました。
オウエンボクはマレーシアの公園や街路樹に多く見られますが、東南アジア以外の地域ではあまりみかけない花木のひとつです。上向きの花序に黄色の花をたくさんつけます。
ギョボクは香港の公園や街路で多くみられます。この樹は、3小葉で淡黄色の美しい花をつける美しい花木で、やはり他の地ではみられない香港独特の花木です。
バンクシアやテロペアなどは、オーストラリアの原産、タベブイアやティボウキナの類は主にブラジルの原産です。花期にこの地方を訪れると、たくさんの美しい植栽事例が見られます。
以上の植物たちは、やはり原産地に近い気候の所ほどベストの開花をするように植栽されています。その花期をにらんで、直接現地を訪れてみてください。
〇ハワイの名花、オヒアレフア
観光の島ハワイは、太平洋の真ん中にある島で、常に貿易風の影響を受ける海洋性の気候です。高い山の影響で、湿潤なところと反対に乾燥するところがあり、植物の種類も違います。ローカル色に加え、こうしたちょっとした場所の違いによる種類の変化も、熱帯を旅するときの見逃せない魅力の1つでしょう。
バオバブの大きな樹はホノルルの市内でも見られ、その筋の間ではちょっと有名です。ワイキキやダイヤモンドヘッドは、特に乾燥が激しいところで、潅水の設備が行き届いている場所だけが緑に覆われています。
現地名オヒアレファはハワイの山でよく見るパフ状の赤花をつけます。ハワイ原産の代表種といえるこの樹は小笠原のムニンフトモモの仲間です。ハワイでは蜜源樹として重要ですが、これをわざわざ植えているのは見かけません。ハワイアンハイビスカスはハワイ原産のハイビスカス類を親に使って作りだされたもので、世界の熱帯・亜熱帯に広く植えられています。
こうした美しい熱帯花木をまとめて見るには植物園を訪ねるのが、いちばん効率的でしょう。
植物園は、実にさまざまな役割を果しています、その重要なひとつに自生植物などの保存があります。同時に、園芸品種の展示もあります。本書では第4章V.に『熱帯植物が見られる世界の植物園ガイド』でまとめて紹介しました。旅のガイドとしてご活用ください。(本書 p.1097~)
坂嵜信之 編著
尾崎 章・香月茂樹・清水秀男・橋本梧郎・花城良廣・毛藤圀彦 共著
B5判 / 上製 / 1,224頁 / 定価64,900円(本体59,000+税)/ ISBN4-900358-44-4
〔花の美術館〕カテゴリリンク