沖縄とシンガポール
沖縄の花木の将来を考える上で、熱帯植物の花園といわれるシンガポールと比較してみましょう。シンガポールは赤道近くに位置しています。沖縄が北回帰線の北に位置しているために、夏季には太陽は真上に近く、シンガポールと同じくらいの気温を示しますが、冬には日差しは斜めとなり、太陽から受ける熱量も少なくなります。でも、海洋性気候であるという立地条件は両者とも似ています。
熱帯のシンガポールの年平均気温は26.7℃で、沖縄県の那覇では22.4℃です。一般に熱帯は「年平均気温が20℃以上で月平均気温が18℃以上の地域」とされるため、沖縄は、年平均気温の条件は満たしています。しかし、那覇では月平均気温が18℃以下の月が2カ月あり、夏と気温差が大きいため亜熱帯となります。いっぽう熱帯のシンガポールでは年間の変化が少なく、これが両者の決定的な差、すなわち熱帯と亜熱帯との差でもあります。
熱帯はココヤシの分布とほぼ一致し、ココヤシの果実が結実する地域ともされます。沖縄は緯度的には亜熱帯ですが、黒潮の影響を強く受ける海洋性の気候のために、ココヤシの生育が可能で、より熱帯的な地域です。
気温の変化だけで、植物のライフサイクルは論じられません。ですが、沖縄の冬は熱帯の乾季に当たる休眠期と考えれば、熱帯雨林原産種を除いて、多くの熱帯植物が生育できる範囲と考えて間違いないでしょう。また、ココヤシが結実する石垣島は亜熱帯といえどもさらに熱帯的です。
またココヤシの生育限界は、最低気温がおおよそ7℃であることが判りました。実際の最北の生育地としては、奄美大島ではようやく生きている状態です。徳之島では、冬季に北西風の当たらぬ東海岸の屋敷内には元気な株を見ることができます。
坂嵜信之 編著
尾崎 章・香月茂樹・清水秀男・橋本梧郎・花城良廣・毛藤圀彦 共著
B5判 / 上製 / 1,224頁 / 定価64,900円(本体59,000+税)/ ISBN4-900358-44-4
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