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エイサ・グレイ教授の研究

第1次,第2次を通じて,北太平洋遠征隊の採集した植物標本はすべてハーバード大学にもたらされ,エイサ・グレイ教授によって同定,研究されたことは前述の通りであるが,第1次のペリー隊の採集植物は,種子植物301種,羊歯植物21種,蘇苔類9種,海藻類22種の合計353種に上り,その中で新種は種子植物の24種,羊歯の2種,蘇類1種,海藻7種の34種である.

この時に発表された種子植物の新種の中で,伊豆下田産のシロバナノハンショウヅルClematis williamsii A.Gray,函館から記載されたキンギンボクLonicera morrowii A.Grayは,それぞれ上記のウィリアムス氏とモロー博士にちなんで付けられた.他にこの時グレイ教授により発表された新種の中には,横浜からのツボスミレViola grypoceras A.Gray,函館からのエゾノタチツボスミレV. laciniosa A.Gray,横浜のモミジイチゴRubus coptophyllus A.Gray,下田からのウンゼンツツジAzalea serpyllifolia A.Gray,同じく下田のムラサキLithospermum japonicum A.Gray,函館のユキザサSmilacina japonica A.Gray,新属新種のヒトリシズカTricercandra quadrifolia A.Gray(下田及び函館産)等,多くの比較的普通の日本の植物が含まれている.

種子植物の中のカヤツリグサ科のスゲ属については,グレイ教授は英国の王立キュー植物園の当時のスゲ類の専門家のブート博士(Dr. Francis Boott)に同定を依頼し,同氏は18種のスゲ類の内11種を新種と検定したが,その中に下田からのホンモンジスゲCarex pisiformis Boott,横浜からのヤワラスゲC. transversa Boott,下田からのカンスゲC. morrowii及びヒメカンスゲC. conica Boott,函館産のカサスゲC. dispalata Boott等の普通のスゲが含まれている.スゲ属の植物の分布は局地的なものが多いので新種も多かったのである.他にエール大学のイートン氏(Dariel C. Eaton)は,この時にベニシダAspidium erythrosorum Eatonを下田から記載している.その他,蘇苔類はサリヴァン氏(W. S. Sullivant),海藻はアイルランドのダブリン大学教授・ハーヴィー博士(Prof. W. H. Harvey)により研究された.

なお,この海藻については川嶋昭二博士の解説がある.

こうして,ペリー隊の採集標本の中から日本の植物の新種が多く記載発表されたのもさることながら,日本植物の同定を通じてグレイ教授は北半球温帯の植物の分布についての非常に重要な一事に着目していて,同教授の1856年の論文の中に「アメリカ合衆国の植物学者にとって,植物相に関して,米国以外の世界の各地域で日本以上に興味の深い所はない」と明記しているが,これは米国の植物相と日本の植物相との間の顕著な類似性を指摘しているのである.グレイ教授は北米の温帯の植物と日本の植物の特記すべき類似点を,ツュンベリーやシーボルトの日本植物誌を始めとする諸文献や古い断片的な標本で発見,感知しており,その研究を進めるためにできるだけ多くの日本の植物の標本の入手を希望し,こうして実現したのであった.

黒船の第2次遠征隊の採集標本は第1次のそれより,遥かに大量で,採集地もより多くの地域におよんでいたので,それらの研究を通じてグレイ教授は北米の温帯と日本を中心とするアジアの極東地方の植物の隔離分布について,世界で始めての植物分類地理学的な論文を発表したのである(1859).この論文の中に13ページにわたる植物の対照表が発表され,その中でなんと580種余りの日本の植物を北米東岸,同西岸,アジア中部の対応種との比較を試みている.これらの一群の温帯植物は現在「古第三紀要素の植物」と呼ばれる興味深い植物群であるが,植物の化石データーに乏しく,植物の類縁をより正確に示す染色体の研究も始まっていない当時に,これだけのまとまった対照表を作り上げた比較研究は全く驚異的といわざるを得ない.この東亜と北米の間の隔離分布については次章に解説する.

ロジャース隊長指揮下の第2次遠征隊の採集標本からは,63種の新種が発表されているが,その中にヤグルマソウ属Rodgersiaおよびショウジョウバカマ属Heloniopsisの2つの新属が共に北海道から発表されている.新種の中には下田からのドクウツギ,ウバメガシ,函館よりのクリンソウ,クマイチゴ等の馴染み深い種が散見する.これらの標本は図録の章で御覧いただきたい.

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発刊に寄せて

刊行にあたって

はしがき

1.黒船による日本及びその付近での植物採集

何時,何処で,誰が?
エイサ・グレイ教授の研究
昭和天皇による黒船採集植物の御研究
Plant collecting in Japan and its adjoining territories by the Black Ships (Abstract)

2.東アジアと北アメリカの間の植物の隔離分布について

東亜と北米の間の植物の不連続分布の4型
東亜・北米間の隔離分布の由来
東亜と北米の間で隔離分布する植物の生態
隔離分布している植物の分化
Disjunct distribution of flowering plants between eastern Asia and North America (A summary account)

3.米国北太平洋探検隊採集の日本植物の図録
An annotated catalogue of plant specimens collected in Japan by the U. S. North Pacific Exploring Expeditions(1853-1855), based mainly on the set housed in The New York Botanical Garden, U.S.A.

タイプ標本 (Type materials)
琉球列島 (The Ryukyus)
九州 (Kyushu)
小笠原 (The Bonin Isls.)
V下田・横浜 (Shimoda and Yokohama)
VI北海道とその周辺 (Hokkaido and its surrounding regions)

書籍詳細

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