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第二十六話 植物園の在りかた

1986年2月8日、国営沖縄海洋博覧会記念公園のなかに「熱帯ドリームセンター」がオープンした。熱帯ドリームセンターは、その名からは、ジェットコースターなどのある遊園地のような感じを受けるが、実際は世界最大規模の巨大な温室施設である。

温室は数棟に分かれ、それぞれ最新の環境制御空調設備を備えていて、全体がヨーロッパの古城を思わせる防風壁に囲まれている。各温室には、多数のランを中心に、熱帯果樹や花木、バナナ類やヘリコーニア類、熱帯水生植物などが展示してある。

展示温室の展示を支えるための大規模な増殖温室や苗圃もあり、研究室も備え、植物探索のための研究員の海外派遣、海外から植物研究者を招いての交流、ランを中心とした育種増殖研究など、総合植物園の理想に向かって活発に歩み始めた。

海洋博記念公園は、公園全体に多くの亜熱帯植物が植えられ、また、「おもろ植物園」という、沖縄の人びとの生活と深くかかわりのあった植物を植え込んだ民族植物学的な一区画がある。これに熱帯ドリームセンターが中核として加わり、さらに「熱帯・亜熱帯都市緑化植物園エリア」を加えて、本格的な大植物園に発展しつつある。

財団による運営方式に妙味

海洋博記念公園は、国営の公園だが、その運営・管理は財団法人・海洋博覧会記念公園管理財団が行っている。熱帯ドリームセンターの計画・建設に情熱を傾けてきた当時の財団理事長三好勝彦氏(現在、社団法人・日本公園緑地協会会長)は「植物園は、生きた植物を対象として育てる所だから、完成ということはありえない」という。これは、植物園運営についての名言であり、在るべき基本理念であると、私は信じる。この公園の運営は、その基本理念によって、財団という組織形態のもとで行われている。

管理財団は、公園の基本的な運営・管理は国からの受託事業として行うが、ほかに独立した研究機関としての機能を備え、植物遺伝子の保存・探索収集、育種、研究活動や学術交流などは、財団の公益事業として行う。

官公立と私立の長所と短所

植物園は将来にわたって、植物を育て、集め、これを維持し、研究していかなくてはならない。そのためには、永続的な財政基盤がどうしても必要である。

植物園の運営は、わずかな入園料だけでは、焼け石に水、とてもまかないきれるものではない。だから、ヨーロッパやアジアのほとんどの植物園は国立であり、税金でまかなわれる。しかし、官公立植物園の欠点は、転任によって、重要なスタッフが長く同じ植物園にいることができない、という点にある。植物の育種とか研究は、10年あるいは20年を単位として行う息の長い仕事である。転任という制度とはまったく相いれない性格をもっている。

このような欠点を除くために、アメリカの植物園の大半は用地や建物は国や自治体のものであっても、その組織の運営はある種の私立のかたちをとっている。ニューヨーク植物園やミズーリ植物園は、財団法人と社団法人をあわせたかたちの非営利研究教育法人であり、植物園の運営は、主として基金の利子、会員の会費、各種寄付金や助成金に頼っている。ここでは転任がないから、腰を落ち着けた大規模な研究計画を遂行することができるし、植物学や園芸学そのものを中心とした自由な研究が可能で、理想的な総合植物園を築くことができる。

しかし、この場合も「経費が続く限りにおいて」という条件があり、これは根本的な欠点といえる。ニューヨーク植物園は、アメリカ経済の下降、預金利子の変動によって、1971年以来重大な資金難に二回直面し、多くのスタッフが解雇されたり、十分な暖房ができなくて温室の植物を死なせるなどの危機に見舞われた。一時は、園のスタッフの俸給が、農業省など官立研究所の所員の半額近くまで減俸されたりもした。植物園の荒廃を防ぐため、職員は研究を投げうって寄付金集めに奔走しなければならなかった。

もしニューヨーク植物園が、海洋博記念公園のように、その管理費を公的な受託資金で保証されていたならば、かけがえのないスタッフや植物を失うこともなく、多少の研究活動の低下だけで危機を乗り切れたであろう。

新しい植物園の建設

1986年の3月に、台湾省の農業委員会の主催で、前記の三好勝彦氏、ハワイのパシフィック熱帯植物園園長W・L・テオバルド(Theobald)博士、タイ林務局標本館長C・ペンクライ(Phengklai)氏、アメリカ国立樹木園技官R・ジェファーソン(Jefferson)氏、それに筆者が主たるスピーカーとして招かれ国際シンポジウムが開かれた。

目的は、台湾に面積1,100ヘクタールの遺伝子プール、研究および庶民の憩いの場を兼ねた国立の大型総合植物園を建設するために、各国の専門家の意見を聞くことにあった。

そこでは、目的を明確にした系統だった植物を集めること、標本館が不可欠であること、大学などの教育研究機関との提携の重要性など、これまでこの本で述べてきたことが強調され、さらに、永続性のある財政的な基盤をもたせることが何にもまして重要である、と提言された。

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