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第九話 植物園と大学

私は十二歳のとき、牧野富太郎先生の門をたたいて、この日本の植物学の父といわれる名高い先生の直弟子にしていただいた。

そのころ、先生から何回かお聞きしたことなのだが、先生が『日本植物誌図編』を執筆されていた明治三十年ごろには、帝国大学理科大学(現在の東大理学部)の植物学教室は小石川植物園内にあって、標本室、図書室、実験室、生きた植物標本のある植物園が一カ所にまとまっていたので、研究や講義に非常に好都合だった、ということであった。

牧野先生の著書『日本植物誌図編』や、その続編ともいえる『大日本植物誌』は、精密完璧な図版と極めて優れた記載によって、現在でも世界にこれらの右にでるものがないほどの、日本が誇るべき名著である。こういう研究も、ある意味では、植物研究室が植物園内にあったからこそ可能だったのだろう。

王立キュー植物園も大学と協力へ

東大の植物学教室は、その後、本郷の現在の地へ移転し、小石川植物園とやや離れることになったのだが、それでも私の在学中、植物園が近くにあるということが、生きた植物の研究にどれだけ役に立ったことか。この点で、植物園のない大学の学生より、はるかに恵まれていた。

現在の大学や植物園は、それぞれに大きく発展し、かつ多様化した組織になった。植物研究から、植物の導入、遺伝資源保存、さらには市民へ憩いの場を提供するような大型の総合植物園では、それ自体が大学一校程度の規模を有し、大学付属の実験園という程度をはるかに超えた組織になっている。

しかし、植物園の主たる使命は、植物を集め、栽培や保存することであり、植物の研究はできても、研究者を養成する高等教育が主体ではあり得ない。一方、大学は高等教育と研究が主体だから、大がかりな植物の採集、栽培、保存にまでは手が回らないし、それらが本来の使命でもない。

したがって、植物園と、大学の植物関係の学科が提携して、いわゆるコンソーシアム(共同体)を形成することが、理想的な植物研究の実現のためには望ましく、新しい植物科学研究機関のあり方として注目される。

大学と植物園の提携を早くから実施して、その共同体形成に成功した例は、ドイツのベルリン・ダーレム植物園および同植物博物館と、ベルリン自由大学植物研究科の三者共同体、ニューヨーク植物園とニューヨーク市立大学の二者共同体としての植物系大学院、同じくアメリカのミズーリ植物園とジョージ・ワシントン大学生物学科との共同体などがある。

伝統的に、植物学者を自己の植物園で養成してきたイギリスの王立キュー植物園でさえ、最近ではレディング大学との協力体制を作り、同大学の植物分類学関係の院生は植物園の研究官の指導で学位論文を書いている。

学生も植物探索隊員として派遣

ニューヨーク植物園・ニューヨーク市立大学の共同体について具体的に説明すると、植物園の研究官のなかの大学院教授の有資格者と、市立大学の生物系大学院の教授とが一体となって、ニューヨーク市立大学リーマン分校の植物系大学院を形成する。

この大学院の教官は、市立大学の教授、副教授などと、植物園の研究官、副研究官などを併任することになる。

実際の講義は、植物分類学、資源植物学、植物形態・解剖学、植物化学分類学などは、植物園研究棟内の講義室や実験室で行われ、植物生理学、細胞遺伝学、分子生物学などの大学で行う方が適した講義は、市立大学のキャンパス内で行われる。

学生もそれぞれの専攻に応じて、例えば、植物分類学、資源植物学、民族植物学などを専攻の者は、植物園内の学生研究室に自分の机を持っていて、標本や図書の利用が便利なようになっている。こういう大学院生の指導教官は、植物園のニューヨーク市立大学併任教授がこれに当り、学位試験の主査も努める。副査には市立大学の教授も加わることになる。

この共同体は、日本では考えられないほど両者の密接な関係によって成り立っており、植物園からの市立大学併任教授は、市立大学の運営委員や試験委員という要職に就くこともある。また、植物学系大学院生の奨学金にしても、双方から出資して配分されている。

植物分類学関係の大学院生は、植物園の研究活動の一環である植物探索隊に加わり、隊員として南アメリカやアジアへ派遣されて、野外実習の単位をとったり、植物園のデータバンクである標本館で管理を手伝いながら、データバンクについて学んだりもする。

諸外国と協力研究や国際会議も

ニューヨーク市立大学は、狭いキャンパスに大型のビルが立ち並ぶ典型的な都市型大学であるから、植物学教室を植物園の緑のなかに置けることは、極めて恵まれた条件だといえる。

植物園にしてみれば、研究熱心な大学院生がたくさんいることによって、世界の植物学をリードする高水準の学術研究や研究者を育成する有意義な活動を展開できる。また、植物園の学芸官の手不足をも大いに助けることにもなる。

また、植物園が大学活動の場であることから、国際協力研究や国際会議を活発に行うことができる。南アメリカやヨーロッパ各国との協力研究である『熱帯アメリカ植物誌』、東南アジア諸国との協力による熱帯アジアの植物系統研究などは、中心的な活動である。国際会議では、ニューヨークで行われた「熱帯アメリカ植物機構会議」「日米セミナー」などのほか、ニューヨーク植物園の主催によるアジア資源植物関係の国際セミナーを二回にわたり、バンコクと台北で行っている。

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