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第十七話 娯楽に公開されるケース

サトザクラが満開になる四月の中・下旬ころの週末の一日、ニューヨーク市にあるブルックリン植物園は、子ども連れの人びとでにぎわう。

この日は恒例のSakura Matsuri(桜祭り)。八重桜の並木に挟まれた芝生のモールは、飲めや歌えのお祭り騒ぎになる。

モールの端に舞台をしつらえ、紅白の幕を張りめぐらす。まず、市の高官や団体役員などが、かくも盛大に一般市民のために一日を提供する植物園への、感謝と賛意をこめた挨拶をする。そのあと、コメディーや歌、子どもたちの芝居。隠し芸などが次々と行われる。

モールの周りにはレストランが屋台を出し、民芸商や旅行社のパビリオンが立ち並ぶ。集まってきた人たちは浮かれ、酒を飲み、踊り出すのだが、シンセサイザーなどによる音楽はガンガン鳴るし、一瓢を墨堤に携え散りゆく桜花を惜しむ日本のお花見とはまったく違った雰囲気である。

私のかつての学生で、現在ブルックリン植物園の研究員であるトムに「桜祭りはどうだね」と聞いてみたら、「私はこの催しには関係していないけれど、芝生が荒らされ、サクラが傷められることがつらい」と嘆いた。

なるほど、サクラの木の枝が子どもが登って折れたり、花の多い枝が持ち帰られてしまったりする。人びとが去ったあとのモールには、コーラやビールの空き缶、紙屑󠄀などが散乱している。この植物園には、珍しい「鬱金」「関山」「白妙」「天の川」「水晶」「普賢象」などのサトザクラの品種、ヒガンザクラ、ヤマザクラなどのサクラの種類がよく揃󠄀っている。大切なコレクションがお祭り騒ぎで傷められるのは、確かにもったいないことである。

ハロウィーンの「憑かれた温室」

同じニューヨーク市にあるニューヨーク植物園の年中行事のひとつに、ハロウィーンの日に催されるハウンテッド・グリーンハウス(haunted greenhouse)がある。これは「憑かれた温室」とでもいうべき催しで、10月31日の夜、ヤシや大型のサボテンが立ち並び、ホウライショウなどの蔓がからむ温室の中に、妖しく灯をともし、植物園の広報担当の職員などがお化けや怪獣に扮して、子どもたちを驚かす。この日には、子ども連れの家族がたくさんやって来る。

これでも、温室内の植物が荒らされたり、発煙筒をたいた灰で白いキクの花が汚れたりするなど、被害が多い。

コンサートやオペラにも開放

植物園がこのように一般の公園として利用される例には、ニューヨーク市ではほかに、野外コンサートや野外オペラがある。この種の催しは、世界各国でみられるが、東京都の日比谷野外音楽堂のような、そのために造られた施設で行われるのがふつうである。

ニューヨーク市の場合は、大型のトラックやトラクターで舞台を持ち回り、市の中央公園のほか、広い芝生や草地のあるところならどこでも行う。そして、ニューヨーク交響楽団の野外コンサートは、ニューヨーク植物園の「スイセンの丘」でよく催される。

野外オペラは、真夏の夜、ニューヨーク植物園の中央モールで行われる。その日は午後になると、舞台や音響機器、移動便所などが大型トラクターで運び込まれる。舞台の設置がほぼ完成する夕方になると、観客が椅子や毛布を持って続々とつめかける。アイスクリーム屋、ハンバーガー屋、キャンディー屋などがどこからともなくやって来る。夜八時ごろ、オーケストラとオペラ歌手が到着し、八時半から夜半近くまでオペラが演じられる。

このとき大変なのは、植物園のガードマンと、翌朝モールを片付ける園丁や掃除夫たちである。

私立及び第三セクターの植物園の宿命か

このような市民のための楽しい行事は、大変結構なのだが、植物園がその場所に使われることには疑問がある。植物園は、園芸や植物の研究者、花の庭園の美を楽しむ人など、植物そのものを見にくる人に開放している点で、一般の公園とは異なる施設である。

ニューヨーク植物園やブルックリン植物園が、必ずしも植物を対象としない公園行事まで行っているのは、この二つの植物園が「準市立」と云って経費の一部しか市に仰がない、実質的には私立的な性格の強い植物園であり、その運営費の大半を民間の寄付金等に頼っているからである。広報担当者の言い分は、多くの人びとにその存在を知ってもらうこと、多くの人たちの求める催しに協力することが、寄付金をふやすためにも必要だということにある。

ニューヨーク植物園ではほかに、モールや花木園で結婚記念写真の撮影がかなり頻繁に行われる。「スナッフ・ミル(Snuff Mill)」という水車小屋を改造したレストランでは、結婚披露宴が行われる。

園内の売店では、当初は植物園の絵葉書、植物の本、園芸用具などで植物園で吟味したものを売っている程度だったが、最近すご腕の店主に代わって、営業方針が変わり、コーヒーカップ、折り紙、Tシャツ、石けんなど、売れる雑貨なら何でも売るようになった。これらは、いずれも植物園のかなり大きい収入源になっているし、桜祭りやハウンテッド・グリーンハウスの入場券売り上げは相当な金額に上る。しかし、後片付けや清掃の費用、ことに植物の損失を考えると、果たして得になるのかどうか、はなはだ疑問だといわざるを得ない。文化研究機関としての植物園が、金策に苦労しなくてはならない状況は、米国のような強力な文化国家にしては大変意外な面である。

かつてのロックフェラーのような文化理解者の大財団が減った今日、なぜ政府がもっと植物園に積極的な援助をしないのであろうか。

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