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第七章 植物生態の不思議

第九九話 動く植物のはなし①

捕虫する珍草ハエジゴク

触れると動くもの、温度・湿度に反応するものとさまざま
ムジナモの葉は〇・一秒とすごい速さで捕虫します


植物は動かないから興味がわかない、とよくいわれる。そんなことはない。ムービングプラントといわれる動く植物がたくさんある。

まず、学校の夏休みの課題などによく使われるオジギソウは、広く知られている。刺激を受けると葉や枝の付け根の関節の細胞に水圧の差ができ、次々と他部に伝達しておじぎをするというのがそのからくりだ。

ドイツ北部のルール大学の温室で見たスパーマニア・アフリカーナ(シナノキ科の花木)の白花のおしべの花糸は、昆虫の足や体、人の指などがタッチすると動きだす。多分、受粉を助けるためだろうといわれる。ドイツではチンマー・リンデ(室内のリンデン)と呼んで、ごく普通の観賞植物である。

園芸店などでよく見かけるハエジゴクの葉は、ジョーズ(サメ)のような歯を持った貝の形をして開いているのがふだんの姿。

ハエや小昆虫にとって、この葉に近付くのはきわめて危険だ。貝の形の葉の内側にある敏感な毛にふれると、2枚の葉がパクリと閉じて逃げられない。

水生植物のムジナモはよりデリケートだ。浮草の葉に捕虫用の貝の形の葉があって、水中のカイダニなど微小な虫のくるのを待ちうけている。体長1.3mmのカイダニが危険を感じて逃げだす速さは毎秒4mmといわれている。一方、ムジナモの葉の捕虫運動が完了するまでの速さは0.1秒だからとても逃げ切れるものではない。捕らえられた虫はやがて溶かされ、養分として吸収される。ハエジゴクも動きが早いが、ムジナモはそれ以上で、捕る早さではナンバーワンだという。

子供たちに夏休みの課題として好材料。また、原生地に返してやれば、自然保全に役立つ。

昔は群馬県の多々良沼や近畿地方の巨椋池などに群生していたが、宅地開発などによる水の汚染で絶滅に瀕して久しい。

大阪大学・柴岡教授は、ヒマワリに興味を持ち、なぜ花がお日さまに向かって動くのか。古くから世界中のどこの国でも信じていたことを調べた。

彼の実験によると、若いヒマワリの生長点(枝先)に斜めから光を当てたら、多量の光を受けた方の葉は生長ホルモン(オーキシン)をつくり、主軸が曲がったが、その後どの葉にも同量の光が当たるようになると曲がらなくなるのを見た。

つまり、若いヒマワリは一定の条件のもとで絶えず太陽の方向に頭を向けているのであって、単純に動きまわっているのではない。

ムービングという視点から紹介した。次の項でもう少し詳しく見てみよう。生命の神秘を隠し持っているという意味で、植物の魅力に科学的メスを入れてみる必要がありそうだ。

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