第五一話 針葉樹のはなし
針葉と、うろこ葉に大別
この種類は大木で長生きする木が多いのはなぜ?
名前を覚えるのに便利なグループ分けがされてます
針葉樹は葉が針のように細い松や杉、ヒノキなどのグループを指す。英名はコニファー。コニファーガーデンという場合は改良された品種を配植することが多い。
また、針葉樹のグループを古くは松柏類と言った。柏は落葉広葉樹のブナ科の槲(カシワ)でなく、扁柏(ヒノキ)、花柏(サワラ)、羅漢柏(アスナロ)、竹柏(ナギ)など漢名による。ちなみに多くの人が目にする柏は、中国では針葉樹のグループ。
針葉樹は植物の大分類では裸子植物で、桜やツバキ、ナノハナなどの被子植物とは違う。子房(胚珠)が裸で露出し、種子が果実に包まれていないのが特徴。針葉樹という呼び名は葉の形から広葉樹に対比して作られ、日常的に使われている。だから、正確に言えば裸子植物で、葉が針状になる木ということになる。
木の名は、針葉と広葉、常緑と落葉のようにグループに分けると覚えやすい。もっとも、この2つのグループをクロスして問題を出すと意外に難しい。
例えば、針葉で落葉の植物はと尋ねられて、5種類挙げられる人は少ないと思う。答えの一つのヌマスギ(ラクウショウ)は北米東南部、ミシシッピ川下流からフロリダ全域の川や湖沼に生える水生の落葉針葉樹。10年程前、フロリダ半島中部にある熱帯植物園で見た水辺のヌマスギは見事だった。英名はバルド・サイプレス。枝にはスパニッシュモスがつき、気根の族生する根の回りはゼラフィンサスなどが咲き、楽しい風景を見せている。
また、生きた化石として有名なメタセコイアも落葉針葉樹で1945年に中国四川省磨刀渓で発見された。その後、公園などの公共オープンスペースに植栽され、今では立派な緑化木である。この二種の小枝だけを示されると、たいへん似ているので区別に迷うが、よく観察すると葉の付き方がちがう(第三六話 葉序のはなし 参照)。
ちなみに5種類とはヌマスギ、メタセコイア、カラマツ、イチョウ、スイショウ(グリプトストロブス・ペンシリス)である。
針葉樹は杉、ヒノキ、松などが材木として使われる以外に、造園や園芸などの身近な材料としても利用されている。特に造園で木を選択する場合、落葉か常緑かの区別は大切な指揮である。
川上幸男 著
B6変型判 / 並製 / 301頁 / 定価1362円(本体1,238+税)/
ISBN4-900358-40-1
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