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第四章 幹の不思議

第五〇話 樹皮のはなし

樹皮の〝衣服〟

人間と同じく肌の色あい・艶が健康のバロメーター
キハダ(黄肌)は胃腸の特効薬、山歩きの心強い友になります


〝バーク〟とかバークたい肥の名で売られているのは、樹皮バークのことだ。樹皮は木本茎の外周を構成している皮層のことで、木栓(コルク)層、木栓形成層、緑皮層(葉緑素があり同化作用や養分を蓄えている緑色の層)、靭皮層でできている。

樹皮の外側を表皮といい、たいてい1年以内に乾燥して剥離したり、カサカサになる。しかし、その下はさかんに細胞分裂をする木栓形成層があり、外側に木栓層、内側に木栓皮層をつくっている。木栓層の細胞ははじめのうちは生活力があるが、やがて乾いて、同時に複雑な化学物であるスベリン(木栓素)がつくられ、コルク化する。コルクは内部に空気が充満し、水やガスを通さない、熱の不良導体の物質となる。南ヨーロッパ産のカシの一種コルクガシは有名。ワインの栓などで役立っている。

樹皮を観察するには冬が最適だ。町を歩いていると、街路樹のプラタナスが目に入る。つるつるの紋様のある肌はオリエンタリスとか、アケリホリア、あるいは雑種で、深い縦の溝が入っているのはオキシデンタリスである。このように樹皮の表面の肌の姿を見て木の名前を覚えることができる。

低山帯の山歩きでよく見る落葉木にアサダがある。木の皮がうすく縦にさけて垂れているのが特徴で、葉や枝を見なくてもすぐ分かる。同じ山歩きでキハダという木にもよく出合う。黄肌で、皮を少しけずると真っ黄色なのが特徴。山野草や野の木にくわしいと遭難したときに生命を助けるというが、食べることのほかに、医薬的に頭や腹の痛みを治すこともできる。このキハダの黄色い樹皮をかみ砕いて飲めば腹痛にきく。ただし、苦味は身ぶるいするほどにきつい。

はじめに紹介した〝バーク〟と俗称している園芸資材は、アメリカ産のレッドウッドという針葉樹の樹皮。皮をはぎ、大、中、小に砕いて袋詰めにしたものだ。インテリアや、芝庭の大きな木の根まわりなどに砂利と同じように敷くと装飾的に使える。

樹皮にも、花にあるような彩りがあることを知っているだろうか。「これからの花木」という話をしたとき、若い植木生産の専門家に木の皮の種類を色別にあげなさいといったら、白シラカバ、シマサルスベリ、赤(赤銅色)ヒメシャラ、黄ミズキと答えてくれた。補足すると、赤にはカエデの品種・珊瑚閣がある。冬空によく映える赤い大枝、小枝は花以上にきれいだ。

まだまだあるが、単に木の皮といっても、じっくり観察すると興味つきないということが分かったと思う。

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