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第三章 葉の不思議

第四一話 ロゼットのはなし

重なり合って円をつくる葉

タンポポやオオバのように、地面にへばりついたように生え
一見茎がないようですが、ちゃんと存在します


タンポポのように、葉が地面にへばりついて四方に広がっているものをロゼット(rosette)という。冬枯れの野山や道ばたでよく見かける。「植物用語辞典」(廣川書店)によると、「根出葉が重なりあって円座形をなすもの」となっている。根出葉というのは、葉が極めて短い茎に叢生(群がり生える事)するので、いかにも根から生えているように見えることから付けられた名だ。例えば、タンポポの茎は短縮茎(dwarf stem)で、この茎から多数の葉が密生し、放射状に造形するからロゼット植物の典型である。ヨーロッパの野原や庭園でよく見かけるチャボアザミ(Carlina acaulis)は、刺が強く大柄だ。巨大タンポポのような美しさにひきつけられる。種名のアコーリスは無茎のという意味だが、短縮茎があって葉や花が出てくる。

何年か前の11月初め、花と緑で村おこしをしている群馬県倉淵村へ行った際に、「市民農園」の一画でルドベキアのロゼットを見つけた。通常は高さ30~80cmの花茎の先に花が咲くが、この場合は地面に接して咲いていた。原因は土中の水分か光の条件か、定かではないが、初めて見る現象でなんともうれしかった。

初夏に黄色の花を付けるハナニガナは、春にロゼットの葉が紫斑に着色して美しいところから付けられた名だ。田んぼに生えるタビラコは田平子と書き、田の面にロゼットの葉が平たく張り込んでいる形から名付けられた。誰でも知っているガーベラ、ガザニアなどの園芸草花も同じグループである。ミヤマオトコヨモギ、ハマヨモギ、イヌヨモギなども、葉が根ぎわで形の良いロゼットになる。ハルジョオンは、冬中ロゼット状の緑を付けている。

ロゼットとは言わないが、根出葉が多いシダ類の多くには、茎(短縮茎)があることを知って欲しい。木生シダのヘゴは、はっきりと地面から茎が出て幹状になっている。

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