第四話 花の誕生のはなし②
生殖の為の驚異の知恵
花の形は三花三様
サギ、極楽鳥にスリッパ、カンガルー、その形容はさまざまです
花というと直感的に連想するのは、やはり美しい、きれいということであろう。その美しさは、花びらだけでなく、苞やがく、花糸にもあるのだが、もっと素朴な興味から花の大きさ、形をとりあげてみよう。
大きな花といえば、日本で見られるもので、草花ではロシアヒマワリ(直径30~50cm)、巨大輪アサガオ(同24cm前後)、花木ではタイサンボク(同25cm前後)。ところが目を世界に向ければもっと上がある。
熱帯の島ボルネオやスマトラの密林の中には直径1.5mにもなるラフレシア・アーノルディがある。地面をはうヒレブドウの根に寄生する植物で、梅花状の5弁の花、中心部にわん状になった部分には10ℓもの水を入れることができるという。花だけの重さで7~8㎏もある。3~5日の寿命だが、閉じるときには小動物などのみこまれてしまうのでは?と思うほどの大きさだ。
もっと大きい花がある。やはりスマトラに産するサトイモ科のショクダイオオコンニャク(アモルホファルス・ティターナム)。花を付ける燭台コンニャクという意味で、高さが2mにもなる巨花で、棒状の肉穂花序と苞の一種の仏炎苞とで出来ている。コンニャクの直径50cm、重さ60kgという代物だ。
では極端に小さい花はというと、これはたくさんある。荒地や田んぼの間などに普通に見られるナデシコ科のノミノフスマは花弁の長さ3mmぐらい。小さな葉を蚤の夜具にたとえている。もっと小さいのが、花茎1mmのミジンコウキクサ。果樹のレイシやナツメは実の大きさは3cm前後だが、花は直径3mm前後とごく小さい。
観賞用草花でもスイート・アリッサム(ニワナズナ)など小さい方で直径3~4mm、ヨーロッパ産のルリタマアザミ(エキノプス・リトロ)は小さな管状花の集まりで、美しい銀青色の花になる。
花の形は、これがまた千差万別である。身近な例では、サギソウはまさに満開時の姿は鳥の鷺が飛んでいる形だ。インテリアで時に登場するストレリチアは熱帯の極楽鳥に似ていて、英名もバードオブパラダイスで親しまれている。
オーストラリア産のアニゴザントスはカンガルーポウと呼ばれ、カンガルーのツメの形をした美しくも変わった花だ。これからクリスマスに向けて出回る鉢花で洋ランの仲間パヒオペディラムは、欧州ではレディススリッパーといわれている。花の形が婦人用のスリッパにそっくりという意味だ。
私か言いたいのは花は生殖のため、子孫繁栄のためとはいうもの、様々な形、大きさ、色彩、香りを提供して、人間をはじめとする地球上の生物に限りない恩恵を与えてくれているということだ。
花 ―― お前は何という素晴らしさを産み出してくれるのだろう
ティード・モニエ
川上幸男 著
B6変型判 / 並製 / 301頁 / 定価1362円(本体1,238+税)/
ISBN4-900358-40-1
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