第五話 花芽分化のはなし
むやみな枝切りにご用心!!
時期や、花芽と葉芽を見分けることは大切
レタスは高温でキャベツは低温で花芽ができます
植物の芽は一定の時期が来ると、花芽と葉芽の区別ができる。これを花芽分化 Flower Bud Differentiation=フラワー・バッド・ディファレンシェイションという。花芽分化は外見上にはよく分からないが、芽の中で起きる。芽の内部の生長点(器官の先端にあり、分裂が盛んで新しい組織を作るもとになる細胞の部分)が葉芽よりも膨らんで持ち上がり、頂上が平たんになった時が最初の兆候だ。
どうして花芽ができるかについては、内部には植物体内にある特殊な花形成物質「花成ホルモン」によるという説が有力。外部要因としては、植物の生長期の気温、日照、水などと、栽培方法(促成、抑制)によることなどがある。
例えば、レタスは高温(20度以上)になると花芽ができ、反対にキャベツは低温にあうと花芽ができる。日照時間の場合、草花のフロックス(クサキョウチクトウ)は、長日状態で花芽分化が促進され、コスモスは短日で花芽が形成される。プリムラ(西洋サクラソウ)やサイネリアも短日だが、その後の生長は長日が良好といわれている。
花芽が分化すると、がく片、花弁、おしべ、めしべの順序で、それぞれの初生突起ができ、発育して器官に発達する。この時は芽を切断して、初生突起を顕微鏡で見ることができる。この後、肥厚したずんぐりタイプの花芽とほっそりした葉芽を肉眼で観察できるようになる。
花芽ができる時期は、花木、果樹などの多くは前年の生長期。力牛、クリは7月、ウメ、モモは8月、ナシは6月が多い。花木ではツバキが6月下旬から7月上旬、ツツジ類は7月、ボケは9月、ユキヤナギ10月、アジサイ11月など。いずれも地域、年によって異なる。
毎年楽しんで観察しているのがハナミズキ。赤花、白花が咲いている初夏が、あまりにも見事なため、来年もと思うのが常。葉が茂っている盛夏には分かりにくいが、秋風が吹く9月になると枝先に偏平形の花芽が遠くから見てもよく分かるようになる。隣の常緑樹のツバキも花芽がこれみよがしに膨らんでいる。
花芽の付く時期だけでなく、枝に付く位置を観察するとまた面白い。カキは枝の上部に花芽があり、クリ、モモも同じだ。むやみに枝を切れば花芽を切ることになり、花が咲かなくなる。逆にブドウの花芽は枝の下の方に付くから、枝つるを伸ばしほうだいではだめ。アジサイの花が咲かないという人がいるが、冬に枝切りした人為的障害が原因なのが大部分だ。落葉のころが花芽を判別するのに良い時期だ。
川上幸男 著
B6変型判 / 並製 / 301頁 / 定価1362円(本体1,238+税)/
ISBN4-900358-40-1
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