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第八章 花観察の旅

第一〇五話 花のオリンピックのはなし

水耕栽培の「野菜工場」に

オランダでは市民庭園をグラインガルテンと呼んでいます


かつてオランダのズーターメーア市で、フロリアードが開かれた。会期は4月から半年。花のオリンピックともいう。5月のこのフロリアードでのこと、会場は元牧草地。広大な屋内展示館には、シャクナゲやツツジが華麗に展示されていた。日本政府のコーナーは、ハナショウブやサクラソウでいっぱい。こいのぼりが人目を引き、孟宗竹を背にした茶席もあって、青い目の客を楽しませていた。

会場は、生産、消費者、環境、未来など7つのテーマごとに分けられ、お花畑の電車や毛虫をデザインしたモノレールが動いている。世界の草花、球根、鉢物、樹木、野菜のオンパレードで、地球上の花と緑の素晴らしさを演出していた。感銘を受けたのは、生産エリアの野菜温室。すべてハイドロカルチャー(水耕栽培)で、トマト、ナス、キュウリ、スイカ、メロンが見事に生育、結実していた。一口で言えば野菜工場だ。若者にとってはもう日常的な世界なのか、施設を見て歓声をあげていたのが印象的だった。

5月のヨーロッパはリンデン(西洋ボダイジュ)の季節。日本より半月遅れの新緑がさわやか。アムステルダム西郊のアールメーア市にあるクラインガルテン(市民農園)の指導研修センターを訪ねた。農園を始める人に、花や野菜作りなどの方法を教えてくれる。無農薬栽培から身障者園芸、養蜂、羊の世話まで基本を学べるところだ。行政側のサービス機関だが、市民が気楽に安く利用できるので、うらやましく思った。

もう一つ、花と緑の巨大なガーデンセンターも訪ねた。広さ0.8haほどの連棟温室の売場で、花木、資材、ラウベ(クラインガルテン用コテージ、20万円前後)までそろっている。出口で買い物客を観察した。鉢を持つ人、大きな庭木をかつぐ人、ワゴン車いっぱいの園芸用土を押す男性、吊り鉢を抱えた主婦や子供。明日の日曜日は、家族で園芸を楽しむのであろう。雨なのに客は引きもきらず。

日本で、どうしたら花と緑を生活に定着させることができるのか、と考えさせられた。やはり心のコミュニケーションに、花と緑は欠かせないと感じた。

ガーデンセンターの両隣は軒並み生産農家。外見は、東京田園調布の住宅の前庭風。背後には、温室や農場が広がっている。フロリアードもそうだが、そこには生産者とマーケットと「消費者」が共存している姿があった。

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