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第七章 植物生態の不思議

第九二話 寄生のはなし①

とりつかれたら最後

偶然やって来た種子が住みつき養分をかすめとる
それがヤドリギ、ラフレシアなど寄生植物の生き方です


▼ 寄生植物( )内は寄主

ツチトリモチ (ハイノキ)
キイレツチトリモチ (トベラ)
ヤッコソウ (シイノキ)
ネナシカズラ (ヨモギ、ヌルデ、アラカシ)
ハマネナシカズラ (ハマゴウ)
マメダオシ (ダイズなどマメ科の植物)
ナンバンギセル (ススキ、ミョウガの根)
オニク (ミヤマハンノキの根)
ハマウツボ (カワラヨモギの根)

寄生というと連想するのは寄生虫。植物でいう寄生はヤドリギとかネナシカズラをいう。寄生虫は人や動物たちが被害者。とりつかれたらさいご、死ぬまで養分を吸いとられてしまう。植物の寄生も同じだ。ヤドリギには種類がたくさんある。養分をとられる方(寄主)の種類によってヤドリギの種類も違う。クリスマスの飾りによく使われるのはヨーロッパに多いヤドリギの一種だ。ヤドリギは小鳥などが種子を運んできて、寄主の枝や幹のくぼみに置いていく。すると種子から出た幼根は寄主の樹皮の下へ潜入、細胞組織に入り養分や水分をかすめとる。

ヤドリギは、自然界ではよく見られるが、人工的につくりだすのは簡単ではない。かなり前に東大植物園で試したことがあるが、失敗した。多分原因は、自力で発芽するために必要な水分が不足したからだと思う。その後、ドイツのビュルツブルグ大学を訪ねたとき、植物園内の落葉樹にいっぱいヤドリギが付いているのを目のあたりにした。人工のヤドリギだ。一瞬こちらの技術の未熟さを恥じたものだ。

寄生を利用して園芸を楽しめるものに、ナンバンギセルがある。煙管に似た形で長さ5~7cmの紫ピンクの花が咲く草本だ。好んで、カヤ、ススキらに寄生するので、両者を水盤型の平鉢に寄せ植えする。また温室植物だが、香木で有名なビャクダン(白檀)。単独での栽培は難しいが、同じく香りの草であるレモングラスといっしょに鉢植えにするとよく育つ。栽培が非常に難しい例をひとつ。高知県に特産する野生のヤッコソウは、シイノキの根群の多いところに生活する。W大のA教授は、15年以上前、種子を東大植物園の古木の根株の土中へ埋めこんだ。しかし、いまだに芽生える兆しさえない。さらに難しいのは熱帯アジア産のラフレシア。花の直径1mという記録がある珍奇植物だ。ブドウ科のヒレブドウ属という藤本が寄主。寄生の特徴のひとつである生殖器官(花)が発達している好例だ。

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