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第六章 植物生理の不思議

第八八話 短日・長日植物のはなし

昼と夜のリズムの関係

街灯の光で花が咲かない場合もあるのです


秋から冬至に向かってどんどん日は短くなる。明るい昼の時間と、暗い夜の時間とが12時間ずっと同じなのが、春と秋のお彼岸。日本ではこれを境に約2分間ずつ日が長くなったり、短くなったりする。12月末の冬至は昼が9時間余、夜が約15時間と最も短日になる。クリスマスのころ、ポインセチアが真っ赤に色づき、寒い冬景色に明かりをともしてくれる。

ポインセチアが赤く色づくのは苞で、葉の化けたもの。本当の花は日が短くなる秋に咲く黄緑の小花で目立たない。花が咲いてから、苞が色づく。

このように、昼が短くなっていくシーズンに花が咲くキク、コスモス、ハマギク、アサガオ、ダリア(とくにツリー・ダリア)、ポインセチア、シャコバサボテンなどを短日植物という。夏から秋にかけて花の咲くものが多い。

ところが、最近は、苞の赤い、つまり花の咲き終わったポインセチアが、初秋から町中で見られるようになった。

これは人工的に光の調節などをして、短日処理をしたおかげだ。家庭でも簡単にできる。6、7月にさし芽して、5号鉢で培養した株を、9月10日ごろから10~15日間短日処理をする。鉢全体に、光の入らないように箱をかぶせるだけ。毎日、夕方5時にかぶせて、翌朝8時にとる作業を繰り返す。

夜が15時間になり、いやでも花が咲く条件が整う。花が咲くには温度が20度以上必要。だから、9月上旬が花を咲かせるころあいの時期といえる。

短日植物にも変わった野草がある。キク科で史前帰化植物といわれているオナモミがそれ。夜が長いほど花がよく咲くのが通例だが、オナモミは違う。例外的に昼が15時間以下、夜が9時間以上なら花が咲いてしまう。

短日の反対は長日だが、日が長くなっていくシーズンに花が咲くグループを長日植物という。キンセンカ、キンギョソウ、プリムラ、ダイコン、ホウレンソウ、エンドウ、ネギなど春に花の咲くものが多い。

電灯などの人工照明を使って昼を長くすることを長日処理という。園芸的に、キクの電照栽培は有名で、愛知県のビニールハウスなどの夜景はみごと。

家庭や駅前広場などの花壇で、マリーゴールドの花が咲かないとよく聞く。調べてみると、街灯の蛍光灯が原因だった。都市の花たちは、人為的な明るさの条件に左右されてとまどっている。

シャコバサボテンの花がなかなか咲かないなどの苦情も似たような原因のことが多い。

師走は駆け足で日が短くなるが、ポインセチアやシャコバサボテンは、短日をわが世の春と謳歌している。心が明るくなるし、自然の摂理に感じ入ってしまう。

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