第七八話 毒植物のはなし
災い転じて福となる植物
キノコの場合、疑わしいなら食べないことが鉄則です
植物には人や動物にとって毒になるものがある。例えば毒キノコ。日本で知られているキノコは約1千種あるが、毒キノコはきわめてわずかだ。牧野植物図鑑には、テングタケ、ツキヨタケなど10種前後が記載されている。アルカロイドの一種、ムスカリンなどの有毒成分が人体に作用して中毒症状をひきおこし、処置を誤れば死を招く。
予防としては、疑いのあるキノコは食べないことが鉄則。巷間でいう「柄がすじに裂けるキノコは毒がない」などの区別の仕方には一長一短があり、信じてはいけない。毒キノコの特徴をしっかりと覚えることが大切だ。一般的な目安をいくつかあげてみよう。
- ① 傘の上にいぼのあるもの(テングタケ、ベニテングタケ)
- ② キノコの根元につぼ(袋)のあるもの(タマゴテングタケ)
- ③ 傘の裏のひだがピンク色を帯びたもの(イッポンシメジ)
- ④ ブナ林に多く、基部の肉に黒いしみのあるもの(ツキヨタケ)
- ⑤ かじると苦いもの(ニガクリタケ)
- ⑥ 広葉樹林内に多く、柄が白で縦に裂け、多少ねじれぎみで、一見食用キノコのように見えるもの(イッポンシメジ)
- ⑦ 竹林に多い茶色いもの(ドクササコ)
世界的に知られている毒草に、トリカブトがある。花の形が鳥の頭に似ていることから名付けられた。観賞用草花として、花屋に出ることもある。栽培品のハナトリカブトやカラトリカブトのほかに、野生のヤマトリカブト、エゾトリカブト、ホソバトリカブトなどがある。日本では庭に植えられることは少ないが、欧米では多い。毒成分アルカロイドのアコニチンなどが人体に毒作用を及ぼし、死に至らしめる。根に多く含まれ、漢方で烏頭(うず)、附子(ぶし)という。薬用として神経痛やリューマチに効く。中国では古くから、人体の活力薬として卓効ありと信じられている。
秋に注意する毒キノコのほか、春はドクゼリ、夏はハシリドコロ、ドクウツギと気の休まることがないが、植物をよりよく知れば、災い転じて福となりうることを紹介した。
川上幸男 著
B6変型判 / 並製 / 301頁 / 定価1362円(本体1,238+税)/
ISBN4-900358-40-1
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