第七二話 しおれのはなし
やはり偉大な植物の生命力
つるを切断してから3週間も生きたセイヨウアサガオ
「しおれ」は漢字を使わない植物用語。以前は「萎れ」と書いていた。土壌水分の減少など、いろいろな原因により、吸水量より蒸散量が多くなったための生理現象。国語辞典を見ると、「水分が少なくなったりして弱る」とある。ところが、エア・プラント(空中植物)などのように空気中の水分を積極的に取り入れている植物も多い。
アナナス科のスパニッシュ・モスは、木の枝や電線などに引っかかり空気中の水分をたよりに生活している根なし草。土壌中の水に頼らないで生活しているたくましい植物だ。
仲間のバラ専門家がおもしろい写真を持ってきてくれた。彼はバラ以外にも草花が好きで、自宅の庭でセイヨウアサガオを育てていたのだが、伸び過ぎて電柱、電線にからむので、9月下旬につる茎を途中からはさみで切った。
ところが、切断したつる茎は、通常なら2、3日でぐったりしおれるはずだが、10月中旬まで生き延びた。しかも、次々に花を咲かせ、通りかかる人たちの目を楽しませたという。
一口に「しおれ」と言うが、「しおれ」にも植物の種類、環境条件により程度がいろいろあり、生きる花たちに教えられることが多い。
ちなみに彼のメモによると、この間のお天気は曇りで雨が多く、1日中晴天という日は少なかったという。
セイヨウアサガオはサツマイモと同じイポメア属で、アサガオのフォルビティス属とはちがう。炎天下の畦に斜挿し、船底挿ししただけで根づいてしまうサツマイモのたくましさがあるのではないか。
川上幸男 著
B6変型判 / 並製 / 301頁 / 定価1362円(本体1,238+税)/
ISBN4-900358-40-1
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