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第六章 植物生理の不思議

第六九話 生長のはなし②

生長と成長

植物は生長、動物は成長


庭のムラサキハナナが先週から咲き始めた。一雨ごとにどんどん生長する。生長は文部省学術用語集によると、成長に統一している。手持ちの国語辞典によれば、植物は生長、動物は成長の文字を当てている。さらに植物用語辞典を見るとやはり生長で、「植物の生体量の増加、体積の不可逆的な増加」と説明している。言いかえると、細胞の原形質の増加、細胞膜の伸長ということであろう。生長部というのは植物体の茎、根の先端部分にあり、常時、細胞分裂が行われている。

ムラサキハナナが開花する段階の生長は「生殖生長」といい、やがて果実ができ、種子が形成される。草花、野菜なども同じで、初期の生長は種子の中にある胚乳、子葉の養分を使って芽生える。やがて、葉緑素ができるのと光合成という一大化学工場の機能を発揮して生長する。

春は目を見はるような生長が、あちこちで見られるから楽しい。芽生えて、葉や茎が育つ現象を「栄養生長」といい、俗に葉肥というチッ素養分を多量に必要とする。

花が咲くようになると、リン酸養分が消費されるようになり、チッ素の需要は少なくなる。生長の段階によって、要求する栄養関係が違うことを知って欲しい。植物の生長で興味がつきないのが、木や草の違いもさることながら、大きくなるもの、ごく小さいものといろいろあることだ。

例えば、南米原産のグンネラ(アリノトウグサ科)がそれだ。春に芽生えた葉が1、2ヵ月もたたないうちに直径1~2mにも生長する。フキに似たお化けのような葉だ。進化論で有名なチャールズ・ダーウィンは、この植物の葉を見た時びっくりしたという。巨大草の典型といってよいだろう。

ところが、水生植物のミジンコウキクサは、大きさが0.4~0.7mmとごく微小な葉を持つ植物で、きわめて対照的だ。キク科のフキは暖地では高さ30~50cmが普通だが、東北や北海道のアキタブキは人間の丈以上に大きく生長する。常識では温度条件のよいところほど、生長が早く肥大も激しい。これが、みごとにくつがえされる事例だといえよう。

まだある。長寿の事例だが、屋久島のスギは1千年も2千年も生き続けている。北アフリカ・カナリア島の竜血樹(ドラセナ・ドラコ)は7千年と世界一の長生きだという。ツルは千年、カメは万年というけれど、本当はそんなには生きないから、いかに植物の生長が長いかが分かると思う。

人の成長や成功は、植物の生長の域を出ていない、という見方もある。

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