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第四章 幹の不思議

第六〇話 茎幹のはなし

大切な栄養の通り路

ご存知ですか?三角、四角、六角の茎


茎を英語でいうとステム。幹は木で太いからメインステム、またはトランクともいい、後者の方が一般的だ。どちらも、根の上部にあり、植物の体を維持するのが役目。しかも、先端に生長点があり、伸長を繰り返し、葉、花、果実を付ける。そのうえ、根からの水、養分、葉からの栄養物質を休むことなく往来させている、重要な通り道でもある。

その形や大きさもさまざまで、タンポポ、シダのように、茎が短縮して目立たず、根からいきなり葉が付いているように見えるものから、とてつもなく大きくて、高さが160m以上にもトックリヤシ、トックリラン、ボトルツリーの幹だ。根ぎわがトックリ形に肥大していて壺状植物ともいう。

トックリを含めて、茎、幹は丸いと思っている人が大部分と思う。確かにそうだが、変わりものもある。

四方竹の稈(中空の茎)や四角ヒマワリの茎は四角だし、畳表のイグサの仲間には三角のサンカクイがある。多肉植物のユーホルビア・トリアングラリスは六角形の茎をもつ。

カニバサボテン、シャコバサボテンは主婦に人気があるが、偏平で緑の部分が葉なのか、茎なのか首をひねっている人も多い。葉のように見えるが、本当は茎で、形態的に葉状茎という。真夏の夜に咲くあやしい美しさの月下美人も葉状茎に白い花が付く。

ネジキはその名の通り、幹のねじれが特徴であるツツジ科の落葉樹。

造型的に美しいのはソロノキ。植物図鑑はアカシデで引いた方が早いが、幹のねじれの解説はほとんどない。ところが、武蔵野の雑木林を散策した人なら、ああ、あれかと思い出すだろう。とりわけ木枯らし吹く冬の情景は印象的だ。

さて幹を暑さ、寒さ、乾燥から昼夜守っているのが樹皮。古い皮が剥がれ、新しい皮の誕生を繰り返すのは生長している証拠。時には美しい肌合いを露呈して人の目も楽しませてくれる。夏にはその意味でプラタナスがせっせと衣替えしている。シラカバのように美しい肌を見せているのに知らん顔の通行人も多い。

こまかくいうとプラタナス・オリエンタリス(スズカケノキ)、プラタナス・アケリホリア(モミジバスズカケ)が学名である。しかし、兄弟でもあるプラタナス・オキシデンタリスはアメリカスズカケノキといい、ざらついた縦みぞの醜い樹皮だ。美しい台湾産のシマサルスベリの白さはよりすばらしいが、なぜか街路樹では少ない。

このように、茎、幹といっても汲めどもつきせぬ働き、役割、顔つきがある。庭や公園の木や草を見たり、手がけたりするときの基礎知識として知っておくと、観察の楽しみが倍増する。

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