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第四章 幹の不思議

第五五話 樹齢のはなし

歴史の生き証人

カナリア諸島のドラセナ・ドラコは7千年生きている
風雪を耐えてきた老木にも敬老の日を


地球上の植物には人の何10倍も長生きするものがある。カナリア諸島に生きている竜血樹(ドラセナ・ドラコ)は千年以上、最長7千年といい、アフリカでゾウの木といわれるバオバブ(アダンソニア・ディギタータ)には5千年以上のものもあるという。

ギリシャ・エーゲ海のコス島にある「ヒポクラテスのプラタナス」は2千3百年以上である。ヒポクラテスは医学の祖といわれているギリシャ時代の哲人。

日本でも屋久島の杉は有名。樹齢2千年以上と言い伝えられている。東京都稲城市高勝寺のカヤノキは1千年、同じく奥多摩町倉沢のヒノキも1千年。いずれも推定樹齢だ。和歌山県の熊野那智大社のクスノキは8百年の推定樹齢。平重盛が植えたとか。

人間は百年にならないうちに敬老を祝うが、老木にもみどりの日のほかに敬老の日をつくったらどうか、 というのが私の提案である。日本人ばかりではなく誰でも、年を重ねた老樹の生きた姿に接すると畏敬の念が生じ、頭を下げ、手のひらを合わせるではないか。

アフリカの長寿の木は、地球の歴史そのものであるし、日本の高齢木も人間たちの喜怒哀楽をじっと見つめて来たのだろう。

誰でもが知っている大きな木、老樹の年がいかに多いかは分かったと思う。しかし、身近な庭の花、例えば、〝2百年生きたバラ〟といえばニュースではなかろうか。

京成バラ園芸研究所の鈴木省三所長は、昭和15年ごろ、箱根外輪山の冠岳で幹の太さ30cm前後のフジイバラ(ローザ・フジネサンシス)を発見、推定樹齢2百年であったという。

バラというと栽培品種を見なれている多くの人は、高くても2、3mの低木と思っていようが、ヨーロッパの植物園、とくに北欧のノルウェー、スウェーデンでは3~6mの大きな野生種の株が元気に育っている。しかし、北欧や日本の山岳は気象条件が平地とは違うから、生長には時間がかかる。高さや幹の太さが平地の何倍もの年月を物語っているのである。

ちなみに高山の120年生(ハイマツの年輪の一つの厚さを調べたら0.225mmだったという(河野齢蔵著『高山の研究』)。前に紹介した屋久杉は2.0mmというから約10分の1の遅々とした生長である。

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