第四七話 巨大草のはなし
傘にして雨をしのぐ
草の生長期は一年が勝負ですが、木は多年にわたります
木は多年にわたり、丈が高く生長する。ところが草は長くても1年が勝負。これから紹介する種類は、生長期の春から夏にかけて一挙に伸長する巨大草、ジャイアント・グラスだ。
かつて、スイスのシャンペ高山植物園を訪れたとき、高さ4m前後に達した巨大草の一種を見ることができた。
ロシア南部に近いコーカサス産のハナウド(ヘラクレウム・マンテガジアーナム)で、実物と標本がそろっていた。学名はヘラクレウム。古代ローマの植物学者プリニウスが、あまりの壮大さにギリシャ神話の英雄ヘラクレスにちなんで命名した。
日本にも、古くから知られた巨大草がある。北海道・東北地方に見られるアキタブキで、普通のフキと違って高さが2m以上になる。
280年ほど前の書物『和漢三才図会』に津軽産のアキタブキが紹介されている。「葉の直径3~4尺になり傘にして暴雨を防ぐ。南方の人これを聞いて信ぜず」と記している。筆者も少年のころ、学徒動員で北海道にいた時、傘代わりにして雨をしのいだ思い出がある。いずれも短期で巨大に生長するのが驚きとも言えよう。
メキシコ産のツリーダリアは高さ5m前後になる。10本もあるとダリアの林だ。都会の一角をダリアやヒマワリの林で演出するのも都市景観の一つとなろう。
このほかコウショクキ、西洋ダンチク、タチアオイ、シオン、ハゲイトウ、ビロードモウズイカなど巨大草はたくさんある。これらを植物園や公園でも展示植栽すると有意義だろう。
川上幸男 著
B6変型判 / 並製 / 301頁 / 定価1362円(本体1,238+税)/
ISBN4-900358-40-1
〔花の美術館〕カテゴリリンク