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第三章 葉の不思議

第三五話 葉脈のはなし

四通八達している水液路

人間でいう毛細血管……
観葉植物では目を楽しませてくれるアクセントにも


葉っぱを漂白し、ピンクや黄色に色を染めた葉のしおりがある。今はあまり見かけなくなったが、そんな葉をはさみながら、読書を楽しんだ人なら、表題「葉脈」を見て、「あれのことだな」と思うかもしれない。

葉脈は、葉肉内を走る維管束(根、茎や葉に四通八達している水液路)のこと。英語でベイン(Vein)という。水や養分を運ぶ動脈という意味では、人の血管と全く同じ機能を果たす重要な器官だ。欧米人は血管も、葉脈と同じベインと呼ぶから、これは生物の共通語といってもよいだろう。

この葉脈の配列は、植物のグループ種の同定(分類上の所属を決めること)の有力な決め手になる。葉脈の配列は大きく分けると、その走り方で平(並)行脈と網状脈とがある。網状脈はさらに、羽状脈と掌状脈とに大別されて、グループの特徴になる。グループというのは平行脈が単子葉植物(イネ、ユリ、ラン科など)、網状脈が双子葉植物(バラ、ツツジ、カエデ、マメ科など)で、羽状脈はサクラ、掌状脈はヤツデが代表。これが基本型だ。

ところが、基本から外れ、複雑な要素を持つ種もある。例えば、山野に多いサルトリイバラは3~5本の主脈が縦に走るが、網状脈だ。北海道の山などで美しい花を咲かせるエンレイソウも同様。ウバユリもはっきりした網状脈を持つ。判然とした平行脈を持つヤマユリなど、同じユリ科のユリ属とは異形。異端児のような存在だ。

竹類はほとんど平行脈だが、子細に観察すると平行脈の縦のライン同士を連絡する横格子目があるのと、ないのとがある。ホウライチクにはそれがないが、メダケ、マダケ、ヤダケには格子の葉脈が走っていて区別できる。

エノキとムクエノキの葉脈は網状脈で葉がよく似ているが、ムクエノキの方が基部で3主脈がはっきりして直線的なばかりか、途中の3つまたが目につき、区別できる。果実はエノキは紅褐色で硬く、ムクエノキは紫黒色で漿果のように甘く大きめと、簡単に区別できるが、果実のない時期は葉脈が有力な区別法だ。ニッケイとヤブニッケイも葉脈で同定か容易。ニッケイの方が3本の主脈がはっきりしている。山地に多いキク科のモミジガサは葉脈分岐がはっきりしないが、近縁のテバコモミジガサは鮮明で細脈までよく見える。

区別だけではない。観葉植物には葉脈が美しく、人の目を楽しませてくれるものが多い。キツネノマゴ科のフィットニア(アミメグサ)、アフェランドラ(キンヨウボク)、トウダイグサ科のクロトン、サトイモ科のカラジュームなど目を見張る美しさだ。

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