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第六章 植物生理の不思議

第七六話 色変りのはなし

アジサイの七変化

アジサイの色の変化は土の性質に左右されている
アルカリ性はピンクに、酸性はブルーに


夏には、花の色の移り変わりを楽しめるアジサイが各地で咲く。鎌倉の明月院、東京・小石川の白山神社、千葉・松戸の本土寺などだ。

昔からアジサイは七変化する花としても有名だ。淡い白からだんだんに青を帯びてくるところなど楽しい。雨にけぶるアイ色の花はあやしくも美しい。アジサイの花は、栄養や生理の面で土の性質に左右されて色がつくという。アルカリ性でピンク、酸性で青色というのが定説。土中の鉄分やアルミニウム成分が大きく関与しているという学者もいる。

一般に花は満開を過ぎると褪色現象を起こし、色あせてしまう。ところが例外もある。例えば、綿の花。朝開いた白い花が、夕方にはピンク赤に変わってしぼむ。果実が熟して裂けると真っ白な綿が出現して花のように2度楽しめる。

もっとすばらしいのがある。フヨウの仲間の酔芙蓉。八重花で、午前中の白クリームの花が、夕方までには赤みをさす。姿がほんのり酔顔色なので昔からこの名で親しまれている。

バラの品種のひとつ「チャールストン」は、ツボミのときは黄色で先が赤だが、開くほどに朱色に変わるもの、黄色に赤みがさすものなど混じりあい、弁裏の白がちらちらして華麗な色変わりの美しさを見せてくれる。ミニチュアローズの「イエローメイディランド」もそうだ。名の通り、はじめ黄色、満開時には白ピンクというか、黄が薄くなったクリームの弁に、濃ピンクがハケでなすったように色づく。みごとな変身というほかない。このほか、「ピース」「ふれ太鼓」も色移りが激しい。

色移りの原因は花弁も生長しているということだ。バラの満開のときの花弁の広さは、ツボミの3~5倍になるともいう。花の色素の多い少ないによって器用に化粧するのだと思っていい。

赤いバラが咲きながら青みを帯びることをブルーイングという。花びらが老化すると、中にアンモニアが発生、花びらの中の有機酸の一部を中和するためだという。最後に、スイカズラ科のヒョウタンボクを紹介しよう。

全国の山野にごく普通に自生する落葉低木。初夏からが花どきで、白い花が盛りを過ぎてくるとすばらしい黄色に変わる。そのためにキンギンボク(金銀木)と呼び珍重され、個人庭園などによく植えられている。ただし、花後に付く赤い実は猛毒なので注意して欲しい。

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