第二五話 子葉のはなし
初期生長の大切な役割
一人前になるまでの大事な栄養補給
形、色によって優秀な花が咲くかどうかの判定ができる
子葉はマツを代表とする裸子植物や、サクラやアサガオなど多くの種類がある被子植物の種子の発芽のとき、最初にあらわれる葉だ。数が一定していることから、1枚だけの単子葉類(イネ、ユリ、ランなど)と、2枚ある双子葉類(アサガオ、ヒマワリなど)とに分けられる。マツなどの裸子植物は2枚ないし多数ある。
アサガオは種子をまいてから、数日で発芽して開いてくる2枚の葉が子葉で、双葉とか貝割葉とかいわれる。カイワレダイコンは知っていても、子葉といわれると「はて」と首をひねってしまうだろう。貝割れは貝割葉のことで、実は子葉そのもの、大根の幼苗である。だから、子葉にはいつも身近に目にふれ、食していることになる。
子葉は地上に出てくるのがふつうだが、地中に残るのもある。クリやベニバナインゲンがそれだ。ドングリも地中に残る。種皮をむくと、多肉で栄養満点の子葉が2枚合わさっているのがわかる。クリはこの子葉を食べる。植物にとって子葉は、本葉や幼根が一人前になるまでの栄養補給をする大事な役割を持っている。そればかりか、子葉の形、色などによって優秀な花が咲くかどうかを判定することもできる。
例えば、アサガオは、子葉の形が尖っていると、先祖返りで劣等な花しか咲かないといわれている。丸味のあるのが大輪咲きを約束してくれ、また、子葉の数ヵ所に白い斑点があると優秀な大輪が咲くという。緑葉は小輪がでやすいので見つけ次第抜きとるのが定石。
面白いのがマツなどの裸子植物の芽生え。この仲間は子葉が複数なため多子葉類とも呼ばれている。小さな種子が発芽すると5~7枚の子葉を束のように広げる。先の方に種子の殼をのせているので、発芽の姿は芸術的。殼がとれると中心から本葉が生長をはじめるという寸法だ。種子をまく機会に初期生長に大切な子葉の存在をよく観察して欲しいと思う。
川上幸男 著
B6変型判 / 並製 / 301頁 / 定価1362円(本体1,238+税)/
ISBN4-900358-40-1
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