食料、木材、燃料供給源として、信仰、レクリエーションの場、そして災害防止として大きい役割を持つ、価値ある森林について、色々な面から見て行きましょう。
植物は移動性がないため、自分の性質に合った所にしか生育しないので、集団の景観としては、その場所の気候条件を表現しているといえます。全地球的に見ると、この植物分布を決める気候の主要素は、降水量と温度が大きく関係していますが、日本のように森林が成立するのに十分な雨量のある所では、温度の違いにより、緯度による水平的、高度変化による垂直的な分布の型が見られます。
温度条件は、垂直方向での高さの違いによっても大きく変化し、海抜高が上がるほど低温となり、普通標高100m高くなると気温は約0.6℃下がると言われており、この温度差は、垂直方向での植物の生活にも影響し、生活する植物も違って来ることになります。(1000mの標高差の登山をした場合の植物の変化を水平的に見ると1000㎞位の移動をした場合の景観変化に似てきます)一般には、低山帯、山地帯、亜高山帯、高山帯と言うような区分法が使われます。
- 低山帯は、クリ帯、山麓帯とも呼ばれる、人工的な影響を受け易い所で、ミズナラ、カシワ、クヌギ、シデ、クリなどが主な木で、アカマツ林が出来易い。
- 山地帯 ブナ帯とも呼ばれ、ブナ、シラカバ、カエデ、トチノキ、サワグルミなどのなどの紅葉が美しい、落葉広葉樹が主となり、ツガ、モミ、ヒノキ、スギ、サワラ、ウラジロモミなどの針葉樹も一緒に生えています。
- 亜高山帯 針葉樹林帯とも呼ばれ、シラビソ、トウヒ、オオシラビソ、コメツガ、カラマツが主な木で、落葉広葉樹では、ミネカエデ、ダケカンバ、ヒロハカツラなどが生育し、林内にはシシャクナゲが群落をつくることが多く、林内の空中湿度は割合高い。
- 高山帯 針葉樹、落葉広葉樹とも、丈が低くなり、高木の生育できなくなる森林限界から上を呼びます。主要な木が、ハイマツなのでハイマツ帯とも呼ばれます。タカネナナカマド、ミヤマハンノキ、風で岩に押し付けられ、伸びられないダケカンバなども見られます。高山植物と呼ばれ、お花畑を型作る植物が生育しています。
水平的に樹木の分布が変化して行くのを、水平分布と呼び、垂直分布に比べて、緯度による温度の変化は急激でない為、範囲は広くなります。便宜上次のような分け方がされています。
- 照葉樹林帯 常緑樹で葉は厚く、表面に光沢のある樹種が主体となり、冬でも、下生えも濃緑で林内は湿度が多く、着生、蔓性植物が多い.海岸近くや、山麓帯に多いタブ型。陽当り良く、やや乾燥気味のシイ型。内陸の山地でやや湿度のある環境のカシ型などのタイプに分けられ、ツクバネガシ、アカガシ、アラカシ、シラカシ、ウラジロガシ、イチイガシなどのカシ類、スダジイ、コジイなどのシイ類、クスノキ、タブ、ヤブニッケイ、カゴノキなどのクス類、その他ツバキ、サザンカ、イスノキ、モチノキ、ヤマモモなどが多く見られます。雨量の少ない暖地に出現する小型の森にウバメ型林があります。ウバメガシ、タイシンタチバナ。
- 暖帯落葉樹林帯 ブナ帯と照葉樹林帯との間に位置する森林。イヌブナ、クリ、コナラ、シデ類、モミ、ツガ、アカマツ、サワラ、ヒノキ、スギ林などを含み、京都周辺、信州地方、北関東、東北南部内陸地に多く見られる型です。
- 温帯落葉樹林帯 単にブナ帯とも呼ばれ、地表にササを伴っている型で、シデ類、カシワ、クリ、コナラ、ケヤキ、トチ、ホウノキ、ヒノキ、サワラなど暖帯林上部の種類が入り込んで来ます。ブナ、ミズナラ、クルミ、カエデ、シナノキ、シラカンバ、ウラジロモミなどが主要樹種となります。
北海道の場合は、針広混交林と呼んでいる森林帯が入り、エゾマツ、トドマツ、ミズナラ、オヒョウ、カツラ、シナノキ、ニレ、ハリギリ、イタヤカエデなどが育成しています。- 常緑針葉樹林帯 亜寒帯、亜高山帯とも呼ばれる型の森林で、北海道では、トドマツ、エゾマツが優占し、本州の太平洋側では、シラベ、コメツガが優占し、日本海側、東北の亜高山帯ではアオモリトドマツと樹種の組み合せが異なります。また日本海側の一部地域では多雪環境で針葉樹林を欠いている所があります。(月山、鳥海山)
オオシラビソ、トウヒ、イチイ、カラマツ、ダケカンバなども構成樹です。以上のような各樹林帯は、はっきり標高により区別出来るのではなく、混ざり合いながら移行して行きます。
〔採録・Aboc Works〕カテゴリリンク