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正しい植物名で緑化の普及 「日本花名鑑」の刊行を機にビジネス活性化

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2000年12月1日 環境緑化新聞 第428号

録花評論 第34回

東京農業大学教授・近藤三雄


内外の植物学あるいは園芸や造園の有識者の指導に加え、農林省・建設省や関係団体あげての支援の下、現在、わが国で市場流通している鉢花から緑花用樹木まで約6千種類の植物情報を満載した情報誌「日本花名艦」が明年1月にアボック社から刊行される。その内容と意義を速報したい。

本書は流通している全ての園芸植物のデータベース化を目指し、各植物ことに国際栽培植物命名規約等に準じた名称・学名や日本植物取引コード、形態・栽培・管理・用途にかかわる31項目の特性、有識者推薦の期待種のマーキング、出回り時期、特殊苗の入手先、カラー写真など盛り沢山の情報が網羅されている。

本書は、その標題からは伝わってこない以下に示すようなさまざまな画期的目論みが込められて刊行されたものである。

例えば、日本に植物文化を定着させたい。園芸と造園の垣根を取払い花きの消費拡大を図り植物産業の一層の活性化を促す。正しい植物名称・標記法の普及を図る。花も樹木も含めた新たな視点に立った日本植物取引コードを提案・普及させ、電子取引を可能とする。個々の植物のハーディネスゾーンを示し植栽可能域を知らせるなどの企てが内包されている。

本書は、造園・緑化業界にとっても待望の書と言える。現在、緑化用植物の入手の拠り所としては物価版等があるが、収載されている植物も公共用緑化樹木が中心であり、その種類数も限られており、寸法や単位以外の植物情報は載っていない。また、より多彩な都市緑化が求められているが、材料入手のための的確な情報源がなかった。その意味では本書は花による都市緑化を推進するための格好のバイブルとして機能することが期待される。

特に造園業は生きた植物を素材として空間をデザインする唯一の職能であるにもかかわらず、これまで、その植物についての呼称等の取扱いは、いささか厳密性を欠いていたきらいが正直ある。

造園の植栽図面の中の表現でも植物の標記については、その入手に混乱をきたすような通称名や俗称が記載されるケースもある。特に近年では多彩な園芸種が導入される場面も増えてきた。正しい植物の標記、その基準をいかにするかも明確でははない。また、国際化に伴い学名標記が求められているが、その統一的基準も示されていない。

今後は本書、「日本花名鑑」を拠り所とすればよい。この面からも全ての造園関係者の必携の書と言える。 また、本書を企画した出版元のビジネス戦略であるが、本書に収載されている植物については直ちにラベル(名札)の作成も可能となるシステムも開発されている。わが国の公園緑地でも一部では以前から樹名板が設置されているが、まだまだ十分ではない。さらに近年、各所の公園緑地やテーマパーク、緑化フェアの会場等に新規の宿根草等が導入されるケースも増えている。筆者ですらその名が解らないものも多い。

公園緑地等の空間は言うならば植物園的機能も果たす訳であり、本書の刊行を機に徹底したラベリングが今後、実行されることが期待される。正しい植物名を身近かな空間で国民に教えることが、植物文化を育むための第一歩と言える。

本名鑑の内容は、まだまだ植物屋、園芸屋の視点が強過ぎ、都市に花と緑を咲かせるためのバイブルとしては正直、食い足らない部もある。今後、より内容の進化が望まれる。

なお、毎年、日本で新たに出回る品種は年間2千~3千種と言われている。

本書はその年に流通している植物情報を流すため毎年、新たに改訂刊行される。年々、内容を充実させ、早晩、日本版プラントファインダー(植物情報媒体)としての地位を築くことを期待したい。


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