1984年5月22日 岩手日報
久しぶりに盛岡を訪れた。駅も立派になり大きなホテルも増え、商店街も見違えるくらい近代化されているのに驚いた。
ホテルの人が、「いま桜が満開です」というので、さっそく盛岡城跡にタクシーを走らせた。あちこちに花見の宴が開かれ、カラオケがにぎやかだった。
城内には、私にとっては珍しい樹木が多かった。若いときは旅に出てももっと現実的な快楽を求めて盛り場を歩き回るが、この年になると花や草木など自然に親しむのが何よりの楽しみだ。
大きな木の下に立ち、通りがかりの高校生、子連れの主婦、花見客らしい初老の男性など、十人ぐらいに「この木はなんという木でしょう」と尋ねたが、皆「知りません」とすげない返事ばかりだった。
本当に知らないのか、旅行者にいちいち説明している暇はない、というのか分からないが、もっと親切心がほしいと思った。
公園など名所の樹木には、多少の費用はかかってもできるだけ名札を付けた方がよい。観光客は全国から集まるのだから。 (横浜市緑区 団体役員 服部勉 69歳)
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