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なんじゃもんじゃの話

ヒトツバタゴ
ヒトツバタゴ

盛岡になんじゃもんじゃと呼ばれる木がある。

この奇妙な名前の由来はいろいろあって定説はないが、つぎのようなものだ。

水戸黄門が参勤交代のおりに、今の千葉県神崎市の神崎神宮を参詣したとき、神殿の隣にある「御神木」を指差し、「この木の名はなんじゃ」と尋ねられたが、誰一人としてその木の名前を知る人がいなかった。家臣の某人が機転をきかせて「もんじゃです。」と答えた。以来、この巨木を「なんじゃもんじゃ」と呼ぶようになった。

また、岐阜県蛭川村にある南朝神社の門前にある「南社門樹(なんしゃもんじゅ)」が訛って「なんしゃもんじゃ」になった。

これらがこの名の由来で、何れもその地方に少なくて名前がわからない木の呼び名である。
「なんじゃもんじゃ」と呼ばれている木は全国に三〇本位あって、その樹種はカツラ、タモ、イヌザクラ、タブノキ、イヌシデなど大変バラエティに富んでいる。今述べた神崎神社の御神木はクスノキであり、明治神宮のものと岩手公園のものは、ヒトツバタゴである。
全般に関東以西に多く、北国では岩手県のヒトツバタゴと新潟のイヌシデだけである。

ヒトツバタゴはモクセイ科に属し、日本では対馬と木曽川の流域に稀産するに過ぎない。

現在、大木は殆んど天然記念物などに指定されており、苗の山取は固く禁じられている。

ヒトツバタゴは、雌雄異株の落葉高木で、大きいものでは高さ一〇mを越し、直径六〇㎝にもなる。
六月中旬に開花期を迎え、満開時の白雪が積もったような風情は他に見られないほど美しい。

岩手公園には、なんじゃもんじゃの木が二本ある。本丸に通ずる朱塗りの太鼓橋のたもとの右側の茂みの中に比較的ふるいもの(樹高一〇m、胸高直径二〇㎝)が一本と、公園広場のあずまやの後ろの上り坂の左側に繁る木に混じって一本(樹高七m、胸高直径約一〇㎝)の日本である。どちらも植栽の経緯は不明だが、毎年、六月中旬に白雪のように見える美しい花を咲かせるので開花期に公園を訪れる市民が多い。)

さらに、数年前のころだが、盛岡市公園緑地課が、大新町にヒトツバタゴ三〇本を街路樹として用いた。現在ヒトツバタゴといえば珍木。めったに八m、径一二㎝位のものを揃えるとなると並大抵のことではできない。街路樹植え込みの施業を引き受けたという盛岡市本町通りの藤村豊香園に問い合わせたところ、次のようなことが明らかになった。

苗木の植栽地は大新町の市営苗圃であって、湿りの多い場所に密植されており、樹勢はあまりよろしくないが、根張りが浅く、掘り出しが容易であるばかりでなく、活着が良好であった。苗木は聞くところによると、上堂工藤苗圃(現工藤緑化センター)が何年か前に市に寄贈したもので、まだ百本近く残っているとのこと。

この情報を得たので、なにか大きな拾い物ができそうな気持ちで工藤緑化センターを訪れた。 同センターは、明治二三年に先代工藤民五郎が現在地に山林種苗圃として創業、去年で百年を迎えた本県の環境緑化に大きな貢献を果たした県内有数の種苗業者である。

先代民五郎は毎年春と秋、関東、中部方面を種苗仕入れのために回るのを常としていたが、昭和四一年不慮の交通事故に遭い旅行ができなくなった。

翌年からの種苗仕入れは妻ミヰさんの肩にかかった。以来、毎年のように夫民五郎の取引先をめぐる仕入れの旅を続けた。

ヒトツバタゴの仕入れいついてミヰさんは語る。
「毎年、春と秋の仕入れの旅は、夫のかねての取引先を回り、ウメ、サクラなどの苗木類を買い集め、これを鉄道の小包便で送って貰いました。ヒトツバタゴの苗木は、何年だったかははっきりしませんが、四五年頃ではなかったかと思います。長野の波田だったか、それとも帰りに立ち寄った岐阜の中津川市の田舎の苗木屋さんのどちらだったか忘れましたが、珍しい苗木だからと、長さ四〇㎝位の山採り苗を無理矢理買わされました。株数はたしか百五十位だったと記憶しております。これが今考えるとヒトツバタゴだったわけです。
この木はなかなか花が咲かなかったし、だいいち、私らもお客さんも名前がわからないものだったので、ただ無駄植えしておいた格好で圃場に残りました。石油ショックを契機として、働き手も少なくなりましたので、圃場面積を縮小することにしまして、放出苗木の大部分のものは同業者に買い受けして貰いましたが特殊なものはどうしても処分できませんでしたので、それを市のほうで使って頂きたいと申し入れまして、差し上げました。それは五一年の秋でした。その中に一本も売れなかったヒトツバタゴ、つまり、なんじゃもんじゃが含まれていたわけです。」

その足で、大新町にある市の特設苗圃を訪れた。

テニスコートのように立派に造られたゲートボール場のすぐ後ろに、二~三種類の樹木が小林分を形造っていた。向かって右側の小林分はまさしくヒトツバタゴ。密植されているため、細々としていたが、まだ若木の枝と幹には、はっきりとその表情が示されていた。数えてみると百本を僅かに越えている。今や、このように揃ったヒトツバタゴの入手は不可能事である。それだけに、毎年、美しい白雪のような花を咲かせる並木樹として用いてはどうだろうか。一本二本と乞われるままに散植することなく、百株余のヒトツバタゴの大並木、日本一の大並木、否、東洋一の大並木を実現して欲しい。

私は「なんじゃもんじゃ」の並木の夢を画きながら帰途についた。


毛藤勤治

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