樹名ラベル、野鳥ラベルでおなじみのアボック社。同社は植物情報をいろいろなメディア<媒体>で商品化する、という統一コンセプトのもとサイン、ポスター、書籍出版、コンピューター映像などの分野に進出している。今回はその中でパソコン映像システム「GREEN VISION」(グリーン・ビジョン)「GREEN ADDRESS」(グリーン・アドレス)を取り上げる。
「六、七年前から造園植物のデータベースを作りたいと思っていました。当社では植物名のラベルを製造販売しているので、当初、その情報をコンピューターで処理するという社内的な目的があり、実現化していきました」と語るのは、同社代表取締役の毛藤圀彦氏。
造園的要望に応え
グリーン・ビジョンは、植栽設計や緑化、園芸相談のサポートなど、大量な生きた植物情報を扱う、いわばパソコンによる植栽設計図鑑。一般的に造園植物というと、物価版に収載されている約250種をいうが、同システムでは緑地植物データ約千二百件、薬用植物約八百件が動く。相当な数だ。
「植物は材料としてではなく、生き物としてとらえるときにその美しさを見直せる。これからは、質の植栽の時代です。安らぎの植栽などをデザインするためには絵の具の数を増やして鮮やかな絵を描くように、もっと樹木の種類を増やす必要がある」ためである。
また、対象としている設計コンサル、自治体緑化担当者、生産者の人に利用しやすいように美性、特性、用途、形態など細かい造園的要望に応える。
例えば、「六月ごろ湖畔近くで見られる、2㌢ぐらいの花は」という検索も、同システムではキーを入れると文字と映像が瞬時に応える。特長は光ディスクの採用により、植栽の空間的対応や、季節の移り変わりによる変化までの写真(一種二十五枚まで)が大型モニター画面にシャープに映し出される仕組み、また、現場の経験や人から得た新しい知識も後から補足できる<追記型システム>なので、結果として自分だけの図鑑ができあがる。
植物の「戸籍台帳」
グリーン・アドレスは、パソコンによる植栽植物管理用データベース。植栽植物の統合管理、特に導入生育記録、栽培、生産データなどの重要な情報の核となる、いわば植物の戸籍簿だ。
植物園、公園、研究施設など植物を扱うあらゆる機関での利用を勘案した実用的なシステムをめざし、従来は台帳によっていた業務の大幅なレベルアップを目的とした。
最大の特長は、「カード」「リスト」「マップ」の三形式(三画面)によりデーターが把握できること。同システムの呼び物は、地図上を指定すると、そこの植栽植物が作表される機能。データの呼び出しやコマンドの実行もマウスボタン一つで慣れていない初心者でも簡単に操作できる。
これらグリーン・ビジョン、グリーン・アドレスのいずれのシステムも東京大学農学博士の鈴木雅和氏の開発協力により完成した。
今後の展開については「データベースから動画や音などグラフィカルな映像を求める方向と、当然PCからマッキントッシュへの移行、これに対話式のハイパーメディアを使ったより実用価値の高いものの開発取り組んでいます。とにかく見て触っておもしろいものにチャレンジしたい」と語っている。
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