ユリノキは別名「はんてん木」とも呼ばれている。盛岡市・梨木町の山田線踏切のそばから岩手大学の校門に至る道に、このユリノキの並木があった。
生長が早く、真っすぐに伸びるほか、緑の量感あふれる大木になるので記念植樹や公園木として人気が高まっている。またクギ割れしないばかりか、腐れにくいので建築用材としても使われ、オルガンやピアノの外囲材にもなるという。本書は、化石の中のユリノキ、外国のユリノキ、呼び名の由来、花や葉・生長のこと、天然林の性質、用途それに園芸品種としての口苗じっけんなど「ユリノキのすべて」を紹介したものである。
著者は明治四十三年盛岡市生まれ。盛岡高等農林卒。岩手大学講師。盛岡市指定保存樹木保護委員、岩手緑化研究会長をつとめる幾学博士。
「昭和二十年代に県が、全県酪農を旗印に牧野づくりを始めたとき、担当者の一人として数千万本の木を切り倒した。悔いが残る。これを償うために」と若者は本書を編んだいきさつを「あとがき」で述べている。
著者は、ユリノキを増やすため、植栽用途と生育状況を調べたところ全国の都市の七十三カ所で植栽されていることが分かった。そのうち四〇%が公園や憩いの場に植えられ、用途では街路樹が五二%もあった。
また苗木の量産を試み、失敗を繰り返しながら、ついに一万一千本を育てた。「主に県内のユリノキのお好きな方に謂われるままお分け出来たので、いくぶん軽い気分になった」と著者は筆いている。
ほかに専門家である四手井綱芫氏(京大名誉教授)村井貞允氏(岩大名誉教授)指田豊氏(東京薬科大教授)らも執筆、本書を支えている。
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