一八七〇年ごろから、北アメリカ西部に住むインディアンたちは白人たちの武力によって追い払われ、強制的に指定居留置へと移された。大地とともに生きたインディアンの伝統文化は急速に失われていった。
こんな白人との“接触”のなかで滅びゆくインディアンとその文化を記録した貴重な仕事が、いまアメリカで再評価されている。ロマンチックな肖像写真家として知られたエドワード・カーティス(一八六八―一九五二)がライフ・ワークとした全二十巻の大作『北米インディアン』である。
三十年の歳月をかけ、ミシシッピー河以西の全部族の写真と民族誌とをまとめあげたこの大作も、一セット三千ドル、五百部という小部数豪華本だったため、人々の目にふれることは少なかった。
それから半世紀―日本で出版されるこの本は『北米インディアン』の別冊「ポートフォリオ」の代表作百五点を選んだものだ。ナバボ、アパッチ、スー、シャイアン……といった部族たちの風俗や儀式、日常生活がセピア色の大型写真で再現されている。年老いた“戦士”ジェロニモの横顔もある。写真の結婚式の一行はクワキュートル族だ。
カーティスの“滅びゆく民”としての撮影テーマは、今日では問題もあろう。だが、そんな限界はあっても写真資料的、歴史的価値はきわめて大きい。(アボック社出版局・一四,〇〇〇円)
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