1984年4月 中央公論
アメリカ・インディアンの生活と民俗を記述したエスノグラフィーや、彼らを撮った写真家はこれまでも少なくなかった。しかし、六〇年代にいわるゆレッド・パワーは澎湃として起こった時、写真家として顧みられたのはエドワード・カーティスただ一人であった。すでに前世紀の終わりから、北米インディアンを滅びゆく民として限りない愛情を込めて撮りつづけたカーティスの仕事は、『ザ・ノース・アメリカン・インディアン』(一九〇七~一九三〇)に凝縮されているが、先のカーティス再評価気運の中で復刻された本をもとに本書は編まれている。
客観的な記録写真とは異なり、インディアンの表情や構図などに、カーティス独自の主観が投影される。民族の滅びをそういった言葉で言うことは避けるべきなのだろうが、一点一点に尽きせぬ哀愁が漂うのは事実なのだ。写真の付された文章に好適の訳者を得て、とにかく素晴らしい書物になった。
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