1984年2月22日 神奈川新聞
鎌倉の「アボック社」(毛藤圀彦社長)から、このほど相次いでアメリカの異色写真集二冊が翻訳出版された。同社は、もともとが公園の樹木などの植物名ラベルを専門に受託製作する会社だが、造園・修景から出版・編集などへも事業を拡大している。
今回の写真集は、「北米インディアン悲詩」(エドワード・カーティス写真集、一万四千円)と、「森へ」(ダリウス・キンゼイ写真集、一万七千円)で、インディアンと森の二つの視点を通して未開のアメリカの世界へさかのぼることができる。
「北米インディアン悲詩」は、ミシシッピー河以西の全部族の写真と記述による民族詩「北米インディアン」二十巻としてまとめられながら、長い間埋もれていた写真集から抜粋されたもので、インディアンの口承文学から約二十編の詩と説話も収録されている。
「森へ」はアメリカの原始林が開発される過程を主にとらえているが、根元の周囲三十メートルの杉や、高さ百メートルのモミの木など随所に想像を絶する巨木が発場、スケールの大きさに圧倒される。二冊とも、西部劇映画でおなじみの光景がかなり出てくるが、実録写真の迫力はさすがである。
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