1996年4月23日 日本経済新聞
研究者ら全国調査踏みつけ・盗伐などで
保護が必要な植物群落は約七千五百件、うち百五十二件は壊滅状態――。日本自然保護協会(沼田真会長)と世界自然保護基金日本委員会(羽倉信也会長)は二十二日までに、全国の貴重な群落を網羅した報告書「植物レッド・データ・ブック」をまとめた。
調査は千九八九年から七年間かけ、全国約百人の研究者が行った。植物群落はさまざまな植物の集団で、それぞれが特有の構造や種の組み合わせを持つが、調査で保護上重要な群落として計七千四百九十二件が挙げられた。
現状分析は五段階評価でランク分けされ、最悪の「壊滅」に分類された群落は百五十二件に上った。状態の悪い群落は河川、湿地などの水辺や岩場に多かった。主な破壊の原因の順位に「人の踏みつけ」「盗伐・盗掘」「植林化」が上位を占めた。
報告書は保護の緊急性についても四段階で評価。最も保護を急ぐ「緊急に対策必要」にランキングされた群落は三百十件あり、空港建設で揺れている小笠原諸島の兄島の「乾生植物群落」や世界自然遺産に登録されている屋久島の「湿原植生」も含まれた。
保護対策への提言として水源や集水域まで含めた保護地域の確保や、市町村レベルの取り組みによる全国の群落の目録づくりなどを有効な手段、としている。