1996年4月23日 毎日新聞
「レッドデータ・ブック」警告
尾瀬のように複数の植物群落が集まった「群落複合」で約7割、均一な植物が生息する「単一群落」でも半数以上の植物群落で、何らかの保全措置が必要になっていることが22日、日本自然保護協会と世界自然保護基金日本委員会の調査で分かった。貴重なヒバ林やマングローブが含まれている。種ごとではなく植物群落に絞って、存続の危険度を調べたのは初めて。
両団体は、1989年から全国で貴重な植物が生息したり、野生生物がすみかとしている「群落複合」1233件、「単一群落」3989件の植物の生育状況を調査してきた。そのうえで、国立公演の指定地域といった法的規制や開発計画があるかなども考慮し、その群落の保護の必要性・緊急性が大きい順にランク4「緊急に対策必要」同3「対策必要」同2「破壊危惧(きぐ)」同1「要注意」の4段階に分類した。
その結果、「群落複合」では「緊急に対策必要」が岩手県・早池峰山のヒバ林など、10%に当たる125件あった。これに「対策必要」「破壊危惧」を加えた何らかの保護が必要とみられるのが853件と全体の69%に上った。また、「単一群落」では「緊急に対策必要」が、東京都大島の常緑広葉樹スダジイ林など185件、5%。何らかの保護が必要なのは2195件と55%だった。
このほか、北限といわれる屋久島(鹿児島県)のマングローブ林が、港湾整備事業に伴い「対策必要」に分類。小笠原諸島兄島の植物群落は、空港の建設計画があるため「緊急対策必要」と位置付けられるなど、各地の重要な群落が危機にひんしていた。
この成果は、「植物群落レッド・データ・ブック」(B5判、1621ページ)にまとめられた。
(科学環境部・田中泰義)