1981年10月27日 南日本新聞
ヤポネシアの自然博物館
小笠原植物図譜
豊田 武司編小笠原の植物相は、緯度のズレがありながら、鹿児島県本土の南部から南島につながる“海域”と類似というより、同質の展開を示している。いわばヤポネシアの自然博物館。その収蔵品目録をつくる作業が「小笠原植物図譜」によって初めて手がけられた。
とりあげたのは鹿児島大学名誉教授の初島住彦氏が命名発表したフサナリタコノキなど二百三十五種。国立科学博物館、京都大学霊長類センターなど各分野の研究者三十余人が協力、約三百枚のカラー写真はプロの写真家に依頼した。
固有種百二十四種を重点にとりあげているが、単なる目録でなく、帰化種の侵入や動物とのかかわりなど、生態系の歴史的な変化を動的に描き出す試みがなされている。編者は国立林業試験場の豊田武司氏。
(アボック社、B6判変形上装本三九六ページ。 並製三一六ページ)