1994年2月号 自然保護 Nature Conservation Monthly No.381
国立科学博物館・植物研究部長金井弘夫博士は、一三年前に『日本地名索引』上、下(アボック社)を刊行した。それは二○万分の一の地勢図上の全地名を拾い、経緯度の座標で位置を示したものであった。当時の多くの推薦文を見ても、いかに広汎な方面から期待されていたかがわかる。氏の恩師、故原寛博士も、「こうした索引は、自らの研究のためだけでなく、広く各方面に便益を与えるところから出版にふみきった」と述べている。始まりは自らの植物地理学的研究の便宜のため、植物の産地を地図上に示そうとしたのであるが、それが多方面で活用された。今回の二万五○○○分の一地形図による索引の、三八万余件の地名密度には西高東低の傾向があり、それが日本文化の東漸を示すのではないかというのも面白い。
『新日本地名索引」は、レッドデータブックや各地の調査を進めている自然保護関係者や本誌読者にとっても有力な基盤となろう。各地の図書館、学校などにもぜひ備えつけることをすすめたい。
(沼田 眞・NACS-J会長)
新日本地名索引 全三巻
●全井弘夫著 三巻一五万五○○○円(税込み)
●アボック社出版局発行、総発売元丸善(03・3272・0390)