(掲載時期不明 掲載誌不明)
この間、ある書店にいった時の話だ。ここのところ珍しく脚の速い本がある。それもメジャーな出版社が出したものではないところがいい、といっている。思わず、何ですか?それは、と聞き返したところで出てきたのがこの本『樹木アートブック』。 どれどれと手にとって驚いた。立派な本である。本文335ページ。付録をいれて366ページ。オールカラー。2,990円。唸りました。
この本を編集した人からの一言PRがあるので、まず本書を理解していただくためにそれから紹介しよう。
― 1.類書がない。 2.植物形態の解説を省いた。 3.趣味の植栽実用書ではない。 4.花と緑にあふれる庭や公園、町並みを作ろうとしている貴方におくる本―だそうである。
確かに、項目立てからしてすごい。クライメットゾーンが最初にあってそれから目次、本文へ進む。つまり気温帯の解説がなければ植栽を云々できないという立場から物を見ている。ややもすると日本全国どこも同じ植栽になって、しかも樹木がのびのびとしていないのをみると、これは技術というよりも風土にあってないのだな、と思うことがあるが、だからこそこの本ではそこをしっかりと押えた、というのだろう。
そしてつぎに本文。
写真が実にきれいである。たとえばユリノキのページを見てみる。ハンテンボクともいうこの木が写真10葉、彩り豊かに映っている。染まってしまいそうな秋の黄葉はもちろん、ティーカップのような5月の花、葉がすっかり落ちきりシルエットだけになった冬の木など、見ているだけでも気持ちが安らぐ。そういえば普段なにげなく通るあの道にも、あの辺りとあの辺りにこの木が欲しいな……、と思わせてしまうところがこの本の編集のうまさのようだ。
ともあれ、植栽するときの樹種選定やスケッチワーク、そして生育条件、土壌条件、美性・特性などを考えながら作業を進めるためには格好のマニュアル。関係者必携である。因みに本書は高木編。続いて低木編、竹・笹・グランドカバー編も作業中だそうである。本屋さんで買えます。
(アボック社/B5判)
(ほ)