(広報部会長 和田博幸氏)
私が大学を卒業して今の仕事に就いて、ようやく一人で仕事がこなせるようになってきた時に『樹木アートブック』という本が出た。業務上、図鑑などはいろいろと参考にしていたが、この本はそれまでの樹木図鑑とはやや異なっていた。樹木の生育可能な条件に日本クライメートゾーンが採用してあり、樹木の美性・特徴も記述してあったので、植栽設計や植生調査などのコンサルタント業務をするうえで重宝に使っていた記憶がある。ただしこの本の欠点は掲載樹種が少なかった。Ⅰ高木編とあったので次が出るのが待ち遠しかった。
あれから21年が過ぎた。『木を選ぶ・野田坂造園樹木事典』が出版されるのをチラシや業界紙などで知った。著者は『樹木アートブック』の著者でもある野田坂伸也さんである。野田坂さんとは今までに何度か仕事を一緒にさせてもらったことがあり、もう20年来の付き合いになる。新しい本のチラシには『樹木アートブック』の完全版とある。私が長らく望んでいた本が、彼の名前のついた樹木事典として出版されたのだ。
この本の紹介文には次のように書いてある。「造園樹木の『見せ方・使い分け』を重視して、魅力や特性・性質・使い方を解説。図版・写真総数1,224点、索引総件数7,740件。Web植物辞書「花ペディア」の固有ナンバーとQRコードを併載し、Web上の写真・情報と連携させた初めての事典でもある。」
インターネットと併用して使わなければならないので、慣れるまでは多少の不便さはあるが、樹木医の利用としては、樹種や品種の索引はもちろんのこと、目的・環境条件別の有望樹種リスト(3,229種)などから、生育地の適性を判断した、樹木の生育状況の判定に役立てることができる。また、野田坂さんの木の見せ方・使い分けが、彼の実践に基づく新鮮な語り口で書かれており、これも樹木診断の役に立つ。
16,800円と高価で、カラー写真はWebを参照しなければならないが、造園樹木の特性を分かりやすく解説してくれている点では他にない本といえ、樹木医の活用度も高いと思われる。