「適地適木に必須の一冊」
(編集部・宮嶋氏)(株)アボック(神奈川県鎌倉市、毛藤満里子代表取締役)は10月10日、『木を選ぶ・野田坂造園樹木大事典』を発売する。
造園の実践書に、また大書が加わった。しかも本書、『木を選ぶ・野田坂造園樹木事典』は今までに無い、造園に使う樹木をガイドしてくれる事典である。
筆者は『造園界の宮澤賢治』、あるいは鬼才とされる野田坂伸也氏。生枠の東北県人だ。
本書はいわば造園界の『牧野日本植物図鑑』を目指し、全1612種類の造園に使う植物から、適地適木を教えてくれるという、今までに無い使い方が出来る。
製作に40年を費やした760頁の大作。その出版の経緯と著者の人柄に触れつつ、本書の詳細に追っていきたい。■孤高の造園家
野田坂氏の出身は岩手県。東京大学造園学教室卒業。1972年以来40年間、その半生を植栽実践に捧げてきた。現在は故郷に(株)野田坂緑研究所を設立し、緑に囲まれて暮らしている。
本書の原典は1990年にアボック社から出版された『樹木アートブック』。それから20年、「適地適木を選ぶ仕組み」が必要であると思い立ってから実に40年をかけた集大成が本書である。
ではなぜ『造園界の宮澤賢治』と呼ばれるのか。出身はもちろんのこと、氏の視察力、表現力にそれを思わせるものがあるからではないか。
氏の文章は学術的に緻密ではあるが、それ以上にユニークな「美感」がある。「古武士のような威圧感(クロマツ・ミズナラ)」、「風格のある村の守護神(スギ)」、「山の樵かマタギの趣き(カシワ)」。こういった文学的比喩が、なかなか伝わりにくいデザインイメージを掘り起こすきっかけになる。■ユニークな実践書
非常に詩的である一方、実用として大いに役に立つ本書は、現在求められている知識を手に入れ、理解を深めることに役立つだろう。Web植物辞書「花ペディアTM」との連携で、さらなる情報を得ることもできる。
また、単に造園家や作庭家がリファレンスとして参照するだけ目的としていない。生産、流通や建築土木の設計に携わる人々、ガーデニングを楽しむ人々と、全ての樹木に関わる人が、何でもわかるような便利な事典をめざしている。
本書はリファレンスばかりでなく、木の魅力をより引き出す能力も磨くだろう。(B5判/720頁/平成23年10月10日発売)