「帰化植物もっと知って 日本植物画倶楽部 身近な200種、図譜に」
スイセン、オリヅルラン、マツヨイグサ、キショウブなど、外国から日本に持ち込まれ、野生化した帰化植物200種を、写実的に描いて紹介する世界でもあまり類のない「日本の帰化植物図譜」=写真下=が出版された。企画、執筆したのは、全国の植物画家でつくる日本植物画倶楽部。出版を記念して「帰化植物画展」を26日―3月7日10―17時、パルテノン多摩で開き、原画全点などを出品する。会員たちは「日本の自然環境を考える上で、帰化植物に関心を持ってほしい」と話す。
出版を記念し原画展 26日―3月7日・パルテノン多摩
図譜はA4判、408ページ。日本植物画倶楽部会員で日野市在住の瀬高郁雄さん、多摩市在住の曽我恵子さんら106人が3年がかりで制作した。
倶楽部はプロとアマチュアの植物画家で1991年に結成、2004年に「日本の絶滅危惧植物図譜」を出版し、国内のほか、米国でも原画展を開催。その後、絶滅危惧種と対極にある帰化植物と取り組んできた。
執筆者の一人で朝日カルチャーセンター立川講師の石川美枝子さん(59=府中市四谷町)は「帰化植物の中には馴染み深い植物も多く、周囲を見回したらすべて帰化植物ということもあります」という。オシロイバナは江戸時代に描かれた図譜に登場し、明治の中ごろに渡来したオオイヌノフグリは、俳句の季語にもなっているほどだ。
開発など人為的に環境が破壊されたことで在来の野生植物が消えた後に、帰化植物が定着するという例が多いことから、絶滅危惧種の次は帰化植物の側から自然を見つめ直そうと、企画が決まった。
石川さんは「帰化植物には悪者のイメージがあり、粗雑に扱われることも多いのですが、けなげい生きる植物に良いも悪いもありません。これだけ外来種が入ってきているという現実を踏まえ、今後、帰化植物とどう付き合っていくのか、これ以上の流入にどう対処していくのか。日本の自然環境を考えていく上で帰化植物は欠かせない課題のため、図譜を制作することにしました」と話す。
環境省が発表した1550種の外来種リストを基に、実物を観察しやすい200種を選び、絵のモデルとした植物で押し葉標本を作り、ミュージアムパーク茨城県自然博物館学芸員の小幡和男さんに、名称などに間違いがないか同定してもらった。図譜の巻末にはそのデータも収録している。
3月1日14時からは、図譜の監修・解説を担当した東大名誉教授・大場秀章さんが「帰化植物も植物である」の題で講演する。先着280人、無料、パルテノン多摩は京王・小田急線多摩センター駅南口徒歩5分。